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デジタル機器でSTEAM教育を推進!最新の教育事情とは?

おりも みか
製造業ライター

STEAM教育という言葉を聞いたことがあるでしょうか?STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)のことを指し、これらの分野を組み合わせた教育理念を意味します。急速に進化するAIやIoT技術、多様化する社会情勢の変化に対応できる人材が求められている今、科学技術の発展と、多面的な視点で社会問題の発見・解決ができるスキルを身に付けるために最適なSTEAM教育に大きな注目が集まっています。

STEAM教育における授業では、単にITや科学技術について学ぶだけでなく、実際にものを作ったり、疑問点を調べたり、チームで議論を重ねたりすることで、学生たちの自主性や創造性、コミュニケーション能力、プレゼン力、課題解決能力を身につけることを目指します。

このSTEAM教育の現場で使用されているのが、簡単な操作で本格的なものづくりが行える3DプリンターやUVプリンター、レーザーカッターといったデジタル工作機器なのです。

本格的な切削加工機を用いるには特別な技術の習得が必要不可欠。しかし、たとえ工業高校であっても授業内で「つくりたいものをつくれる」だけの専門技術を習得するのは大変です。デジタル工作機器を使用すれば、自由な発想でデザインしたり、使いやすさや動きやすさなどの実用面を考えつつ試行錯誤しながら改良を加えたりといった工程に時間をかけることが可能になります。

また、その安全性の高さと扱いやすさもデジタル工作機器の大きな特長の一つです。旋盤やフライス盤などの電動工具の使用には危険が伴うため、扱いに慣れた教員が付き添う必要がありますが、デジタル工作機器であれば、ある程度を学生に任せることができます。こうしたことも生徒の自主性を育むことに寄与しています。

すでに多くの工業高校や大学で、デジタル工作機器が導入され活躍しています。
広島工業大学高等学校では、2022年より「K-STEAM類型CLコース」を設け、レーザーカッターやUVプリンターLEF2などのデジタル機器を用いたSTEAM教育に取り組んでいます。自由なものづくりができる環境を実現し、新しいものや価値を創り出すクリエイティブな人材の育成に注力しています。

神奈川県立川崎工科高校では、3D切削加工機MDX-540Sを用いてロボットのカスタマイズパーツを自作し、ロボットコンテストに参加。生徒自身でCADデータの制作からパーツの製作までを行っており、デジタル工作機器の簡単な操作性と高い安全性を背景に、生徒の自主性と創造力を引き出す授業が行われています。

長野県岡谷工業高校では、3D切削加工機MDX-40A、UVプリンターLEF、レーザー加工機、3Dプリンターを情報技術科の実習で用い、デジタルデータを使用した「ものづくり」の教育を行っています。ご当地キャラクターを使った商品開発の授業では、UVプリンターでキャラクターのノベルティを製作するなど、実践的な教育を通して、町おこしにも貢献しています。

デジタル工作機器は、すでに多くの企業の製造現場でも使用されており、「本物のものづくり」で使用されている機器に触れることは、学生たちにとって大きなメリットです。座学だけでなく実際に機械に触れ、加工する中で学べることはたくさんあるのです。
また、デジタル工作機器で作り出されるクオリティの高い作品は、学生のモチベーションをアップさせ、学びへの意欲を加速させます。製作物は学校のイベントで配布・販売することもできますし、地域に密着した商品開発を行うこともできます。教育現場が地域社会、そして企業と連携し、「ものづくり」について学ぶことは、日本の製造業にとっても大きなプラスになることでしょう。

新しい技術や製品が、こうした学生たちの自由な発想から生まれてくるかもしれません。日本のSTEAM教育はまだ始まったばかりです。デジタル機器で、今後の日本の教育現場も大きく変わっていくのかもしれませんね。

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