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UVインクジェットプリンターはここまで進化した!
スポーツ用品のオリジナル印刷事例を紹介

おりも みか
製造業ライター

最近は色々なものにオリジナル印刷ができるサービスが増えてきましたが、一体どのようにして「印刷」が行われているのか、また、これまでの手法とどう違うのかについて、スポーツ用品を例に詳しくご紹介します。

クリケットというイギリス発祥のスポーツをご存じでしょうか?日本ではあまり馴染みがありませんが、その競技人口は世界二位ともいわれ、特にインドで人気の高いスポーツです。野球の原型ともいわれるクリケットで使用するバットは木製で、大きな羽子板のような形状をしており、この平らな部分に印刷し、チームのオリジナルデザインを施すサービスが増えてきています。

これまで、こうした用具への印刷は、シルク印刷やパッド印刷、塗装などで行われてきました。しかし、これらの手法は専用の版を必要とするため、個人で好きなものを小ロットで印刷する…という訳にはいきません。版を作るためにはお金がかかるため、一度版を作ってしまうと同じものを何枚も印刷しなければ割に合わないからです。しかし現在はUVインクジェットプリンターでプラスチックや木にも直接印刷したり、一点から数点の極小ロットで本格的なステッカーを製作することが可能となりました。その原理は家庭用のインクジェットプリンターと同じ。データさえあれば版を作らずとも、さまざまなイラストや文字を、必要な枚数だけ手軽に印刷できるようになったのです。

テニスとスカッシュを合わせたようなラケット競技のパデルも、日本ではまだまだ知られていませんが、ヨーロッパやアメリカでは徐々に人気が高まっている新しいスポーツです。パデルで使用するラケットは、テニスのようにひも状のガットが張られたものではなく、穴の開いた板状のものです。UVインクジェットプリンターを用いて、ここにダイレクトに好きなイラストや文字、ブランドロゴなどを印刷するサービスも注目されています。

ですが、ただ印刷すれば良い、というものではありません。家でプリンターを使用して年賀はがきなどを印刷したときに、ズレてしまった…という経験がある方もいるのではないでしょうか。ズレないようにダイレクト印刷するためには、ラケットを固定するための道具が必要です。これを「治具」と呼び、印刷の精度や効率をアップさせるのに重要な役割を果たしています。

クリケットやパデルだけでなく、治具さえあれば、他にも色々なスポーツ用品にインクジェット印刷をすることができます。例えば、ここ数年の日本人選手の活躍によって一気に人気スポーツとなった卓球のラケット。ラケットにはラバーが貼られていますが、このラバー面にもインクジェット印刷が行えます。ラバーはインクの密着性が低いため剥がれやすく、印刷には向かない素材とされていました。また、インクの密着性を上げるためにはプライマー処理が必要ですが、どうしても表面の質感が悪くなってしまうという問題もありました。しかし、適切なインクや機器を選択することでそういった問題も解消されてきています。UVインクジェットプリンターで印刷できる素材はどんどん増えているのです。

(© 2021 Wizard )

ではどんなものにもUVインクジェットプリンターで印刷ができるか?というと、やはり苦手な分野はあります。インクジェットプリンターはその名の通りインクを吹き付けて印刷をするため、印刷面がでこぼこしていたり、曲面だったりするとインクが均等に届かず、印刷しにくいというデメリットがあります。

しかし、治具を工夫することで、こうした問題も解決され始めています。日本で人気のスポーツと言えば、やはり野球。WBCの優勝で日本中が盛り上がったのも記憶に新しいのではないでしょうか。野球に使われるバットは細い円筒状。従来であればUVインクジェットプリンターは苦手な分野です。しかし、回転軸によって治具をゆっくり回しながら印刷を行うという全く新しい発想で、印刷が可能となりました。

また、球面に対しても、ある程度の範囲であればインクジェットノズルから勢いをつけてインクを吐出する工夫により、ダイレクトUVプリントが可能になっています。

UVインクジェットプリンターはどんどん進化しています。もしかしたら「オリジナル印刷をするなんて信じられない」と思われているものにも印刷ができるようになるかもしれません。愛用の道具に自分だけの特別なデザインを施す…というのが当たり前の時代がくるかもしれません。あなたはどんなものに、どんな印刷をしたいですか?そう考えるだけで、夢が広がっていきそうです。

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