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ワンフェス2023 [夏]出展!
ローランド ディー.ジー.によるデジタルソリューションはフィギュア・プラモデル製作にどう生かせるのか

おりも みか
製造業ライター

「ワンダーフェスティバル2023[夏]」が2023年7月30日、幕張メッセ国際展示場で開催されました。ワンダーフェスティバル、通称「ワンフェス」とは、プロ・アマを問わず、各自が製作したフィギュアなどのキットを展示・販売する日本最大規模のガレージキットの祭典です。今回は企業ディーラーが75、一般ディーラーは1812と、前年に比べディーラー数は400組以上増加しています。会場内も盛況で、すっかりコロナ禍以前の姿を取り戻しているようでした。

ワンフェスにはガレージキットを販売するディーラーのほかにも、展示用什器やLEDライトなどといったフィギュアや模型を楽しむための周辺部材、素材や印刷機といったキットを製作するユーザー向けのディーラーも展示を行っています。

今回ローランドディー.ジー.が、ワンフェスに出展。フィギュアの製作における課題解決や、新たな表現方法の手法として、デジタルソリューションがどのように生かせるのかという展示を行っていました。筆者はもともと玩具メーカーで生産技術をしており、フィギュアの塗装を見ると塗装工程数や、マスク・タンポ版の数を数えずにはいられません。そんな私から見た、ローランド ディー.ジー.の展示内容をレポートします。

まず目を引くのが、フィギュアの瞳を再現したデカールです。フィギュアの塗装の中で、最も重要かつ難しい塗装部位と言えば、顔。その中でも特に瞳なのです。瞳の出来はフィギュアの印象を全て決めてしまうと言っても過言ではありません。特に近年主流となっている、大きく、何色ものカラーが使われたキラキラとした瞳は塗装工程も多く、均一な品質を出すことは容易ではないです。その工程をインクジェットプリントによるデカールであれば1工程で完結することが可能になります。

印刷の種類はUVインクを使用したドライデカール、また安全性の高いタイプの溶剤インクを使用した水転写式ものと2種類提案されました。UVインクはマットな質感で立体感があり、溶剤は滑らかで艶がある。さらに、貼り付けが簡単なドライデカールと、貼った感じの少ない水転写を選ぶことができます。
瞳の塗装という点で見ると、UVインクのざらざらとした質感がちょっと気になってしまうというのが正直なところなのですが、これは個人の好みになるでしょう。質感の好みや、他の塗装部位とのバランス、作業性から選ぶことが可能です。

デカールの使い方は瞳だけではありません。ミリタリーに欠かせない迷彩柄などは、塗装では工程数が多く難しいものです。しかしデカールを使用すれば、簡単にリアルな迷彩柄の衣服を再現することができます。

UVインクを用いたデカールは、インクを厚盛りすることで立体的な凹凸を出すことができるというのをご存知でしょうか。これによってシボや毛皮の質感、さらに刺しゅうされた衣類などを再現することができるのです。フィギュアや模型のディテールのクオリティをぐっと高め、高級感を演出できます。

さらにこのインクの厚盛り手法は、自動車や戦闘機の計器パネル部などに用いることで、よりリアルさを加えることができます。UVインクはここまで進化しているのです。これもまた塗装ではできない表現の一つです。

3Dプリンタはかなり一般に知られるようになりましたが、まだまだ万能ではありません。3Dプリンタで出力したものは、積層痕と呼ばれる筋状のざらざらが残ることもあり、滑らかな表面にするためには磨きという工程が必要になります。フィギュアのような精密なものであればあるほど、磨き工程は難しく時間のかかる工程です。

そこで、ローランドディー.ジー.とBROTHERが共同で出展したソリューションを使用することで、これらの問題をクリアすることができます。目的の造形の3Dデータがあれば、ソフトウェアが自動で3Dプリントに必要なサポート材、さらに切削に必要な切削台を付加した形状にデータ変換してくれます。それぞれ異なったソフトを使用していると、3Dプリンタから切削機に乗せ換える際の位置決めの調整が難しいのですが、このソフトウェアを使えば位置決めまでも含めてデータをワンボタンで作成してくれるという画期的なソフトウェアなのです。
さらに切削では、必要な個所のみ削り出してしてくれるのでサポート材をむだに削ることもなく時間も短縮できます。ローランドディー.ジー.の中では最も小型である3D切削加工機「SRM-20」を用いたこのソリューションは、3Dプリンタをぐっと身近にしてくれる、かゆいところに手が届くサポートと言えます。

筆者がお話を伺っている最中にも、輝く瞳に引かれて多くの来場者が展示を見学しており、注目度の高さを感じました。今回の展示では、業務を超えてフィギュアや模型を愛するスタッフたちの熱い思いを感じることができました。デジタルソリューションで、模型やフィギュアはもっともっと新しい表現を手にできるのです。

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