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スペシャリストコラム

パンデミックはパッケージの役割にどう影響を与えるか

VICKI STRULL

VICKI STRULL

パッケージのデザイナー、戦略家、講演者として、一流ブランドや新進ブランドに、オプティチャネル・マーケティング戦略におけるパッケージ印刷の活用方法をアドバイスしています。
また、印刷サービスプロバイダーやブランドオーナーに、新たな収益源を生み出すためのコンサルティングを行い、その戦略を世界各地のデザイン、パッケージ、印刷関連のイベントで講演しています。vickistrull.comまたは、Linked Inで@vickistrullをフォローしてパッケージの最新情報をチェックしてみてください。

時間が経過すると、物事は自然に変化していくものです。しかし、パンデミックのような大きな出来事が起こると、変化のスピードは一気に加速します。パンデミックが始まる前と後でライフスタイルがどう変化したか、比較してみてください。

  1. 食料品などの小売店の商品をオンラインで注文する頻度は変わりましたか?
  2. トイレットペーパーやペットフード、洗濯用洗剤などの日用品を定期配達してもらっていましたか?今はどうでしょうか。

Eコマースが急速に普及すると、ブランドに重要な課題をもたらします。それは、ショッピングの習慣や行動の変化が、消費者の「目」と「手」に訴えかけてきたパッケージの役割にどのように影響するかということです。

店頭とオンライン

パッケージには、「守る」「魅せる」「伝える」「喜ばせる」という4つの基本的な役割が求められてきました。しかし今では、これらの機能を店頭とオンラインの両方で実現する必要があります。

パンデミック前からもオンライン購入は増えてきていたものの、買い物客としての私たちは、質感、形状、香り、イメージ、色などを五感で感じることができる店舗で商品に接することがほとんどでした。商品を見て、触って、手に取って、匂いを嗅ぐことができれば、お客様の信頼を得るのはずっと簡単です。

店頭パッケージをデザインする際には、人々が何に気づくのか、どれくらい早く気づくのか、そして商品を手に取ってもらうために、どのようなデザインや仕上げにすべきかを考えなければなりません。商品棚で購買行動を促すのに与えられた時間はあまりにも短いのです。私がよく言うのは、平均的な人間の注意力は8秒で、金魚よりも短いということです。しかし、店頭で消費者の注意を引くには、さらに短い時間しかないと言ったらどうでしょう?

消費者とのコミュニケーションに関する調査によると、人々が朝食用のシリアルを選ぶときに費やす時間は約2.5秒だそうです。オリーブオイルを選ぶときはもっと時間をかけ、最大で60秒かけます。しかし、もし彼らがいつも同じブランドのシャンプーを買っていたらどうでしょう?それともチョコレート?あなたのパッケージデザインは、彼らの足を止め、お気に入りのブランドを考え直させるのに十分でしょうか?消費者の滞在時間が2秒であろうと60秒であろうと、店頭での商品のパッケージは、消費者の注意を引き、棚の上で差別化を図らなければならず、それを「電光石火」で実現しなければなりません。

いつ商品はあなたのモノに?

私たちがお店の通路を歩くとき、もしパッケージが言葉を発することができたとしたら、「手に取ってみて!!」と叫んでくることでしょう。パッケージは、明るく洗練された色使いや、派手さ、艶やかな質感やマットな質感、頑丈で高品質な基材、ソフトな手触りなどをアピールし、何とか手に取ってもらえるよう、注意を引く役割を求められています。

なぜ、商品を手に取ることがショッピングにとって重要な行為と言えるのでしょう?研究によると、人は商品を手にするとその商品に価値を感じ始め、その結果、購入する可能性が高くなります。つまり、商品に触れたり、手に取ってもらったりすることは、売上につながるということです。また、人は商品に独占欲を感じるということをご存知でしょうか?一度手にすると、まだ購入していないにもかかわらず、所有権を感じ始めます。これを心理的オーナーシップや「授かり効果」といいます。優れたデザインは、人の目を惹きつけ、触ってみたい、手に取ってみたいと、つい手が伸びてしまうものです。

手に取って確実に購入してもらうために

「授かり効果」も絶対ではありません。商品を触ったり手に取ったりしたときに安っぽさを感じたり、不快に感じたら、商品棚へ後戻りです。しかし、パッケージを見て触れて気分が高まったり、情報を得て感心したりすれば、ゴールは確実に近づきます。消費者は、意識的であれ、潜在的であれ、期待を抱いているものです。パッケージは、商品棚でのわずか数秒の間に、その期待に応えるか、それ以上のものを提供しなければならないのです。

Eコマースにおけるパッケージの役割

しかし、インターネットでの購入が増え、店舗での買い物が少なくなるとどうなるでしょうか。買う前に商品を触ったり、手に取ったりすることはできません。オンライン購入の機会が増えている中で、パッケージはどのような役割を果たしているのでしょうか。

まず、パッケージは、消費者が商品やブランドをオンラインで見つけられるようにします。これを発見可能性といいます。再びオリーブオイルを例に挙げてみましょう。高品質のオリーブオイルをオンラインで検索すると、オリーブオイルについての記事を読みつつも、必然的に多くの画像を目にすることでしょう。その時にあなたが魅力を感じるのは、器の中に浸されたオリーブオイルのイメージではなく、雄弁さと伝統を感じさせる美しいラベルのオリーブオイルのボトルではないでしょうか。オンラインで買い物をする人は、魅力的な商品の写真に惹かれます。つまり、オンラインパッケージは写真映えすることが必須で、更にブランドのポジショニング、品質、メッセージとの一貫性がなければなりません。消費者が商品に触れることができない以上、パッケージは購入を促すために視覚的に更なる努力をしなければなりません。

小売店でパッケージがお客様に情報を提供し、興味を持ってもらうことが、オンラインショッピングでも同様に求められます。バーチャルショッピングでは、レビューを読んだり、ビデオを見たり、商品の細部について詳しく知ることができます。パッケージが魅力的であれば、私たちはその商品に強く惹きつけられ、もっと詳しく知りたいと思うでしょう。

「購入」をクリックした後に起こること

小売店の場合とは異なり、オンラインでは購入された時点でパッケージの役割が終わる訳ではありません。商品は旅をして、お客様のもとに到着し、そして開封されなければなりません。輸送用の外装と商品パッケージの両方が、消費者の期待に応える必要があるのです。

  1. 輸送箱は輸送中に曲がったり、破れたり、破損したりしなかったか。
  2. 雨でロゴが汚れていないか。
  3. 中身の商品は保護されていたか。

まだ終わりではありません。商品パッケージとその中身が吟味されます。

  1. ブランドイメージ通りの仕上がりか。
  2. 期待する品質を満たしているか。
  3. 説明書、試供品、割引オファーなど、消費者をさらに惹きつける追加要素はあるか。

これらの課題をクリアしたブランドは、商品が「開封動画」としてソーシャルメディアで拡散され、話題になる権利を得るのです。

オンラインで顧客エンゲージメントを促進するパッケージ

人間は本来、社会を作り、生き永らえる存在です。パンデミック時の最大のストレスの一つは、友人や家族に会えないことでした。当然のことながら、その間、人々は直接会って話をすることができない代わりに、ソーシャルメディアやビデオ通話をたくさん利用しました。そして、ブランドは、Facebook、Instagram、TikTokなどで商品やそのパッケージを紹介するマルチチャネルキャンペーンを展開しました。

ソーシャルメディアにおいても、パッケージはブランドの重要な延長線上にあります。例えば、フェイスクリームを紹介するとき、ブランドやインフルエンサー、ロイヤルカスタマーは、クリームそのものを見せるだけでなく、クリームを賞賛したりレビューしたりする際に、パッケージを写真やビデオに収めます。パッケージが前面に出ているのです。

彼らは、ラベルや、商品を囲むカラフルな包装紙や紙パッキンなどのディテールにも着目しながら、外装箱から商品パッケージまですべてをシェアします。

お客様がソーシャルメディアで商品を目にしたとき、それがそのブランドや商品との最初の出会いになるかもしれません。そのため、オンライン上のパッケージには、ブランドを誠実かつ正しく反映させることがこれまで以上に重要になっています。商品の第一印象は重要であり、それはオンラインが主戦場となっても変わることはありません。

パンデミック後のパッケージ

買い物客が再び店舗に足を運ぶようになると、ブランド、マーケター、デザイナー、印刷会社は、何ヶ月にもわたるオンラインショッピングが購買行動にどのような影響を与えたかに注目します。

  1. 何が変わったのか。
  2. 何が変わっていないのか。
  3. エンゲージメントと売上を継続的に向上させるためには、どのような戦略が有効なのか。

世界が変われば、それに合わせて自らも変わらなければならないことを、私たちは身をもって体験してきました。幸いなことに、デザイナーやマーケターは洞察力に優れ、印刷会社は機敏であり、そして、パッケージには素晴らしい適応性があるのです。

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