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スペシャリストコラム

カラーマネジメントの意義、活躍する分野とツール類(後編)

伊藤 健

伊藤 健
CGS Japan 株式会社
取締役 テクニカルマネージャー

工業高校の機械科を卒業後、工業用フィルムの二次加工メーカーへの入社をきっかけに印刷業界に身を置くこととなる。約15年前に現職に就き、印刷会社やメーカーなど、さまざまな業種のお客様にカラーマネジメントソリューションの提案やコンサルティングを提供してきた。色に関する知識が全くない状態で印刷業界に従事し始めてから早34年、経験を積むことで何とか生きていけるという事を実感している今日この頃。影の立役者ともいえるカラーマネジメントに誇りを持ち、お客様に重宝される存在を目指して精進の日々は続く。

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印刷業界では本紙校正やモックアップ製作に有効的なツールであるカラーマネジメントソフトツールですが、その他の分野においても活用されています。インクジェットプリンターなどのカラーデバイス(プリンター・モニター・デジタルカメラなど)を使用している場合、モニターで表示されているカラーがなかなか想像通りにプリントされないようなことを経験されているユーザーは沢山いらっしゃると思います。カラーマネジメントはこのようなお悩みを解決する手段や手法です。特に沢山のインクジェットプリンターを所有されている企業様の場合、複数台の機種間誤差が吸収しきれずに苦慮されているというお悩みを相談されるケースも多くあるのが実情です。

アクリルキーホルダーやノベルティグッズの製作現場では複数台のUVプリンターが稼働するシーンが多くみられる。機体間の色差をいかに少なく留められるかはグッズビジネスにおける課題の一つ。

このようなお悩みに対しては、一つの目標とする色再現領域を決めて、そこに向かってカラーマッチングを行うことをお勧めしています。目標とする色再現領域は、導入されている複数のプリンター間で平均値をとる場合もあれば、特定のプリンターをターゲットにするケースもあります。カラーチャート(約1500色程度)をそれぞれのプリンターで印刷、分光測色計で測定を行い、目標の色再現領域の測定数値と現状のプリンターの測定数値の差異に伴い、カラーマッチング計算(最適化)を行います。その後、再度チャート出力、測定、評価を数回繰り返すことで、数値的にカラーマッチングを行います。これを全てのカラーデバイスで行えば、必然的に目標にしている色再現領域に近づくため、各カラーデバイス間の個体差が吸収されていきます。

しかしながら、このカラーマッチング作業は一度実施すれば完了ではありません。各カラーデバイスから出力される色は、さまざまな要素の影響を受け、時間の経過と共に微妙に変化していくものです。よって日々の管理がとても重要になります。50~100色程度の簡素化されたカラーチャートを使用して、基準値に対して許容範囲内の色再現ができているかを判定するツールを使用することで、僅か数分の作業により日々の管理も簡単に行うことが可能です。この時に許容範囲外の値が発生した場合は、再度カラーマッチングを実施することで原点復帰させることができます。

プリンターから印刷される色は、さまざまな要素に影響を受け、経時変化が生じる。CGS CERTIFIED & EVALUATE を使用すれば、現状の色が正しいかどうか、都度判定ができる。

UVインクジェットプリンターを沢山使用してグッズ製作を行っている会社や、溶剤系インクジェットプリンターで大型のサインディスプレイ製作を行うと同時に、昇華インクを搭載したインクジェットプリンターでテキスタイルやウォール製作を行っている印刷会社にはとても有効なツールであり、カラーコンディションの不調によるミスプリントで発生する損紙や損フィルムの軽減、そしてミスプリントに費やした時間のロスを減らすことで、生産効率の向上に結び付きます。また、常に安定したブランドカラーやキャラクターの色を印刷することができれば、ブランディングを重視するクライアントからの信頼を獲得できるというメリットもあるでしょう。

実際の導入事例として、複数のアクリルグッズ製作会社様に、CGS Japanが販売するカラーマネジメントソフトウェアの「CGS PRESS MATCHER」と、ローランド ディー.ジー.の「VersaUV LEF、LEF2シリーズ」のコンビネーションでご活用いただいておりますし、商業印刷の分野でさまざまなプリンターを導入されている印刷会社様に活用いただいているケースもあります。また、何れのお客様にも「CGS CERTIFIED」という色認証・管理ツールをご活用いただき、日々のカラーデバイス管理に役立てて頂いています。

このように、CGS Japanではローランド ディー.ジー.をはじめとする各種プリンターと連携したカラーマネジメントソリューションをさまざまな印刷シーンにご提供してきました。色に関するお悩みや相談がございましたら是非ともお声掛け頂ければと思います。また、カラーマネジメントツールの新しい技術やノウハウをこれからも皆様にお伝えしていきますので、今後ともご注目ください。

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