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スペシャリストコラム

デジタルの力で食に新しい価値と楽しみ方を

小沢 啓祐

小沢 啓祐
株式会社マスターマインド代表取締役

父である小沢 千壽夫氏が創業したマスターマインド社を2012年に受け継ぎ社長に就任。同社は「ONE for ALL 共に輝く未来のために」をスローガンに掲げ、国内に留まらず世界に目を向けたビジネスを展開。自由な発想と、そのアイデアを実現するための高い技術やノウハウ、そしてあくなき挑戦から生み出される独創的なオンデマンド印刷ソリューションをさまざまな業界に提供している。

今、パーソナライズのニーズが世界中のさまざまな分野で広がっています。その一つに食品分野があり、オリジナルデザインが施されたクッキーやケーキ、マカロン、饅頭、カフェラテなどを目にする機会が増えています。そこで今回は、食品のパーソナライズに欠かすことのできないフードプリンターで国内トップシェアを誇るマスターマインド社の小沢氏に、パーソナライズビジネスの現状や今後の展望、デジタル技術が果たす役割などについてお話を伺いました。

貴社の創業から現在までの歩みをお聞かせください。

1993年の創業当時は、フロッピーディスクにラベルを貼ったり、CDユニット版面に印刷したりするシステムを主流に展開していました。2000年代からはTシャツプリンター、フードプリンター、水性顔料プリンターなどラインナップを拡充し、さまざまな業界に向けたダイレクトインクジェットプリンターの開発・製造・販売を行っています。

貴社のコア技術はどのようなものでしょうか。

世の中にあるいろいろな製品や装置を組み合わせて、新しいソリューションを創り出すことです。お客様一人ひとりに合わせたマイクロニッチなニーズに対応できるのが当社の強みです。例えば、塔婆に印刷したいというお客様に対しては、自然な仕上がりを実現するためのインクを搭載したプリンターと、業界特有のニーズに対応した特注ソフトを提供しています。各業界にはそれぞれ独特の慣習や背景があり、わたしたちが予想していなかったニーズに出会うこともあるのでとても興味深いですし、自分たちがそれを解決していくことにやりがいを感じています。

1996年に印刷した木目看板は、今でも本社玄関で存在感を放っている。

長野県塩尻市に本社を構える株式会社マスターマインド。

安定的な塔婆への印刷需要に応えるべく、メンテナンス性や操作性を向上させている。

マイクロニッチなニーズに対応するために必要なことは何でしょうか。

お客様の声に真摯に耳を傾けることです。弊社の営業担当は納品まで関わるため、お客様とのつながりが強く、意見を吸い上げやすいことにもつながっています。また、「おもしろそう」と思ったら製品を作り、「何に使えるか?」とお客様と一緒になって考えるスタイルで、市場のニーズを吸い上げています。柔軟な製品開発が行える反面、見切り発車になってしまわないようにバランスを大切にしています。

さまざまなメーカーとコラボレーションされていますが、当社ローランド ディー.ジー.製品にはどのような印象をお持ちですか。

ローランド ディー.ジー.製品は、高画質が求められる案件で使用しています。また、しっかりと市場調査をした上で製品を世に出していて、ものづくりに堅実に向き合っている会社という印象を持っています。当社では製品を出してから市場やお客様の反応を見て改善していくことが多いので、いい意味で違いを感じます。

高画質なUVプリンターを大型フラットベッド仕様にカスタマイズしたMR2-008

大判ディスプレイや最大15mmの厚物まで対応可能なUVフラットベッドプリンター MR-015

幅広いラインナップの中で、特に最近はフードプリンターに注力されていますね。

そうですね。2005年に初めてフードプリンターをケーキ屋さんに販売してから、順調にシェアを拡大しています。当社のプリンターで立体物にも直接印刷できるという評判が広まり、リンゴに印刷して欲しいと依頼を受けたのが始まりです。そこで、早速印刷したところ「食べられないじゃないか!」とお客様からお叱りを受け、「それなら食べられるインクを開発しよう」と取り組み始めたのがフードプリンター誕生のきっかけです。

どのようなお客様に利用されており、どういった課題を解決しているのでしょうか。

個人店舗から大手菓子メーカーまで、幅広い層で導入いただいています。

例えば、街のケーキ屋さんやお土産屋さんでは、商品に付加価値をつけたいというニーズがあります。フードプリンターを使えば、ケーキやお菓子などにオリジナルのイラストやロゴを印刷したり、名前や写真を入れたりしてパーソナライズすることが手軽にできるようになります。

また、働く環境を改善したいというニーズもあります。これまでパティシエの職人技だったデコレーション作業をフードプリンターでデジタル化することで、パティシエの負担を軽減します。過去にはパティシエが長時間労働を強いられ、経営側を訴えるケースもあったので、フードプリンターはこうした労働問題の解決策の一つにもなると思います。

さらに、大手菓子メーカーにおいては、人気キャラクターとのコラボレーション商品や期間限定商品の小ロット多品種生産におけるコスト削減や納期短縮の課題解決に貢献しています。

パーソナライズのニーズは食品業界に限らずどんどん広がっていますが、今後の発展性についてどのようにお考えでしょうか。

よりメジャーになると思います。大手企業では、多種多様なニーズに対応すべく小ロット多品種生産に取り組む動きが加速しています。また、個人がビジネスをするケースが増えてきているのを感じています。フリマアプリなどで自分が作ったものを、自分で売ることが当たり前の時代になっています。「スモールビジネス」という言葉があるように、技術を持っている方が経費を掛けずにスモールスタートでビジネスを立ち上げる例が増えているのです。ビジネスをする側が細分化して、個人対個人の取引が増えることで「究極の小ロット時代」が来るのではないでしょうか。当社では個人の方でも小ロット生産が手軽にできるデスクトップ製品のニーズが今後高まるのではないかと予想しています。

パーソナライズビジネスの実現におけるデジタル化の強みや弱み、その役割についてどのようにお考えですか。

強みは、誰でも同じことができるようになることです。同じことをしても個人の技術力の違いにより出来栄えに差が生じたりしますが、デジタル化はその差をなくすことができます。また、特別な技術を持った人だけに依存する必要がなくなるため、経費を下げることにもつながります。

弱みは、頼りすぎると考える力が育たないことです。デジタルがなければ新しいことに挑戦できない、となってしまうのは勿体ない。そもそも自分自身が新たな価値を生み出す力を持っているということを忘れてはいけないのです。

つまり、これまで人がやっていた職人技のような作業をデジタルが担うことで、浮いた時間を使って、ビジネスにどうやって新しい価値を付けていくかを考えることができるのです。これがデジタル化の果たす真の役割であり、今後もますます重要になっていくと思います。

デジタル化を実現するうえで大切なこと、成功のために鍵となることはどんなことでしょうか。

どんなに小さなことでもいいから、まず一つのことを成し遂げてみること。一つの成功事例ができれば、おのずと自信がついて次のステップに進めます。簡単なことから始めて積み重ねることで、デジタル機器をビジネスのための道具として活用できると思います。

実際に全くデジタルに触れたことがなくとも、自分だけで何かをやり遂げたことで自信がつき、次の一歩を踏み出したり、他のアイデアを膨らませたりするお客様を多く見てきました。

小さな一歩の積み重ねが次のステップにつながるのですね。

その通りです。それと同時に、デジタルをいかにアナログと融合させるかが重要だと思います。実際に当社ユーザーのケーキ屋さんが、パティシエとフードプリンターでデコレーションする割合によって、ケーキの価格帯を数段階に分けていらっしゃいました。どちらの良さも忘れず、上手く融合させているのが印象的でした。どんなカタチでデジタルとアナログを結びつけてビジネスを展開していくか、難しくもありますが忘れてはならないポイントです。

お仕事をするうえで大切にしていることは何でしょうか。

世の中にないものに「ワクワクする」気持ちを大切にしています。たとえそれが絶対に売れなさそうなものであっても、誰かにとってはホットな案件になり得るでしょう。どこかで欲しいと言ってくれるニーズが必ずあると信じて、なるべくポジティブな方向で考えるようにしています。アイデアが製品になるまでの過程において、社内でネガティブな意見が多かったとしても、完成した製品を実際に見るとポジティブな反応に転じることがよくあります。「あまり考え過ぎず世に出す」というのも必要なのです。

今後の夢や展望をお聞かせください。

現在は改造機メーカーとしての役割が大きいですが、将来的にはこれまでと違う業界や今までにない市場に向けて、自社のオリジナルプリンターをたくさん提案していきたいです。その実現のためには、お客様や市場からの意見を吸い上げるスピードをさらに速め、ニーズを反映させた製品を立ち上げるサイクルをどんどん回していくこと、そしてデジタルとアナログをいかに上手く結びつけられるかが鍵となるでしょう。

自社オリジナルフードプリンターの第一歩となる
MMP-F210

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