おりも みか
製造業ライター
子どもが描いた絵を、刺繍してくれるサービスをご存じですか?
子どもは誰もが芸術家。
子どもが描く絵は、大胆な構図やカラフルな色の組み合わせ、まだつたない筆遣いは大人では真似のできないユニークな魅力に溢れています。
そして子どもが描く絵は、成長の過程を感じることのできる大切な思い出です。
でも、幼稚園や学校、おうちで、たくさん書いてくれる絵を保管するのは大変です。画用紙ならいいけれど、大切な書類の裏に、チラシの切れ端に、もしかしたら壁に思いっきり。思いもよらない大作を書き込んでしまうこともしばしばです。
そんな子どもたちの作品を、写真に撮って残すだけではなく、何か別の方法で残すことはできないだろうか。
もしそれを、離れた家族に贈ることができたら素敵なプレゼントになるのでは。
そんな風に考えたことはありませんか?
刺繍のお店「ハッティーナーク」
ハッティーナークは、徳島県にある小さなお店です。
現在は楽天市場、ギフトモールなどのインターネットでのサービスを中心に展開しています。
タオルハンカチや、ポーチ、サコッシュなどに、子どもの絵を刺繍するサービスを行っています。タオル生地には世界的ブランドになった今治のものを採用。
絵を写真に撮り、LINE経由でお店に送ると、お店の人とのやり取りを経てタオルハンカチなどに刺繍を施してくれます。LINEを使うのは、スマートフォンで撮影することが多いというお父さんお母さんたちの利便性を考えてのこと。気兼ねなく自分たちの希望を伝えることができます。
送られてきた画像データをパソコンに読み込み、データをデジタル処理したら、業務用ミシンに送信。ミシンが子どもの描いた絵のタッチを、そのまま再現してくれます。
実は、子どもが描いた似顔絵などを刺繍してくれるサービスは他のお店でも行われています。でも子どものイラストのカラフルな色合いまで再現できるのが同社の強み。常時30色ほどをストックし、できるだけ色味を再現できるよう対応しています。
スタッフの情熱が最大の売り
写真を糸用のデータに変換し、実際にミシンで刺繍されるプロセスはデジタルで制御されますが、すべてが自動ではありません。子どもの繊細なタッチや色使い、クレヨンのかすれたような質感は、ひとつひとつ微妙な調整が必要です。写真の読み込みがうまくいかず、そのままでは刺繍できないこともあります。美術系のバックグラウンドを持つハッティーナークのスタッフたちが、日々工夫を凝らしながら作り上げているのです。
これはまさに職人技。
子どもが手で描いたイラストと、最新デジタル技術、そして職人技が合体することで、世界にたった一つの作品が出来上がるのです。
豪快にはみ出した、ライオンのたてがみ。
こんなかわいい塗り方をしてくれるのも小さいうちだけ。微笑ましい筆運びも上手に再現してくれます。
こんなに複雑なお魚のイラストも、カラフルに再現します。
こちらはあえてベタ塗りに。写真そのままではなく、子どもの作品の魅力を最大限引き出すために、親とスタッフで相談しながら作品を作り上げていくのです。
なかには、地面に書いたチョークアートや、子どもの手形でできた壁面アート、粘土や折り紙といった立体物まで刺繍にしてほしいという依頼が来ることも。
そんな無茶なお願いにも、スタッフたちは情熱を持って対応しています。
成長の記録に
筆者の4歳の娘は赤ちゃんのころから、いつもリボンをつけている世界的に人気のキャラクターが大好き。2歳のころには頭のてっぺんから爪先まで、全身キャラクターアイテムに包まれていました。
小さい子どもは自分で絵を描くことよりも、親に「描いて」と言ってくることが多いものです。そのため夫はこっそり練習して、いつも画用紙や公園の砂場に描いていました。
そんな娘が幼稚園に上がり、ある日自信満々に描いて見せてくれた絵は、チャームポイントのリボンも、そして長いまつげも、しっかり描きこまれていてとても驚きました。
いつの間にこんなに描けるようになったの?と思わず何枚も写真を撮ってしまいました。
特別なプレゼント
3歳の息子がお世話になったプレスクールの先生には、クラスの子どもたちが一文字ずつ書いた文字を組み合わせて刺繍をしたタオルをプレゼントしました。文字の色は個別に指定してカラフルな仕上がりに。特別感がありながらも普段使いできるので、先生たちへのプレゼントにもピッタリです。
ハッティーナークで特にオーダーが多いのは、父の日や敬老の日です。
少し成長した子どもたちが描いたそっくりな似顔絵を、上質なタオルに刺繍すれば、お父さんやおじいちゃん・おばあちゃんにも喜んでもらえることでしょう。特にコロナ禍で、手洗いの重要性が見直されている昨今では、タオルは実用的なプレゼントです。
タオルの色や大きさのバリエーションだけでなく、新しい商品も次々と企画されています。刺繍ができるものであればさまざまな展開の可能性がありますので、次はどんな商品が出るのか楽しみですね。
徳島から世界へ
ハッティーナークの刺繍サービスは、2021年4月にスタートしてからまだ1年ですが、認知度はどんどん上がっています。着実に積み上げられたスキルと情熱はオンリーワンです。今後は海外展開も視野に入れています。
世界中の子どもたちが描くかわいい作品を、思い出に残るかたちで届けたい!という熱い想いとともに、徳島から世界へ、活躍の場はさらに広がっていきます。