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スペシャリストコラム

配達は始まりに過ぎない。Eコマースのブランドストーリー。

VICKI STRULL

VICKI STRULL

パッケージのデザイナー、戦略家、講演者として、一流ブランドや新進ブランドに、オプティチャネル・マーケティング戦略におけるパッケージ印刷の活用方法をアドバイスしています。
また、印刷サービスプロバイダーやブランドオーナーに、新たな収益源を生み出すためのコンサルティングを行い、その戦略を世界各地のデザイン、パッケージ、印刷関連のイベントで講演しています。vickistrull.comまたは、Linked Inで@vickistrullをフォローしてパッケージの最新情報をチェックしてみてください。

あなたがプロデュースするブランドの商品がお客様のもとに届きました。Eコマースの取引は完了。ほっと一息?いいえ、安心するのはまだ早いです。それは、パッケージが紡ぐブランドストーリーの始まりに過ぎないのです。

配送用の外装パッケージにまず求められる役割は耐久力であり、いかに商品を安全に目的地まで到達させるかです。しかし、それだけでは記憶に残る顧客体験にはなりません。弱々しい外装の荷物が届き、中の商品に傷がついてしまった場合は、確かに逆の意味で記憶に残る顧客体験になってしまいますが、商品が良い状態で届くことはそもそも期待されているので、それが完璧であったとしても、お客様にとって特別な体験とは言えません。

ここで心理学のお話をひとつ。

“感情には、生存に必要不可欠な経験を思い出させるために、記憶を強化する機能があります。経験の特定の側面を強調して、より記憶に残るようにする蛍光ペンのような役割を果たします”

(Psychology Today、“Why Do We Remember Certain Things, But Forget Others?”より抜粋。
Link: https://www.psychologytoday.com/us/blog/science-choice/201510/why-do-we-remember-certain-things-forget-others


ブランドは、お客様に喜んでいただけるEコマースパッケージをお届けすることで、瞬時にポジティブな感情を抱かせることができ、それは忘れられない顧客体験としてお客様の記憶の中にハイライトされることになります。

「開封体験」が「顧客体験」になるまで

例えば、似たような商品が入った2つのパッケージが届いたとします。1つは美しく丁寧に梱包されていて、ワクワクして箱を開けます。もう一方の商品は、特別な気配りがなく、無造作に包装されています。不快ではありませんが、記憶に残るものでもありません。

届いた商品を使う以前に、あなたはどちらに価値を感じますか?丁寧に箱詰めされた商品か、粗雑な箱詰めの商品か。

勝敗は言うまでもありません。丁寧に梱包された商品の勝ち。なぜでしょうか?このことは、ブランドの顧客体験はパッケージに依存することを物語っています。

店頭で買い物をする場合、消費者は商品を手に取り、パッケージを見て購買を判断することができます。しかし、オンラインショッピングでは、商品の説明や写真、動画、レビューなどがすべてです。つまり、郵便受けや玄関に届いて、お客様が最初に手に取る瞬間から、期待値通りの商品イメージに応えられているパッケージでなくてはならないのです。

  1. パッケージはブランドのコンセプトに即したものになっていますか?
  2. 中身の商品とマッチしているでしょうか?つまり、商品が豪華であったり、シンプルであったりした場合、パッケージは箱を開けたときに何が起こるかを予感させるものですか?
  3. パッケージの品質は、商品の品質に信頼感を与えてくれますか?
  4. パッケージはその会社にどのような印象をもたらすでしょうか?

お客様に理想的な体験をしていただくためには、すべてのパッケージがブランドの延長線上にあることを忘れてはなりません。配送用の外装パッケージでさえ、Eコマース体験の一部なのです。

デザイナーには、素材、色、ロゴ、タイプフェイス、画像など、パッケージを構成するすべての要素が、中の商品を支え、ブランドのストーリーやポジショニングと一致していることを確認する責任があります。

理想的なブランドとは、パッケージが商品だけでなく、オンライン体験ともマッチしているブランドです。もし私がウェブサイトを訪れ、全体的な外観に信頼を感じて商品を購入し、商品が届いた時にウェブサイトと同じブランディングがされていたら、一貫したブランドイメージを感じ、一気に信頼感が高まります。 このようにパッケージをデザインし、整えることで、お客様の体験、リピートオーダー、レビュー、返品率などに大きな影響を与えることができるのです。

開封とブランドロイヤルティ

パッケージは、ブランドロイヤルティを高めたり、スーパーファンを生み出したりするのに役立つこともあれば、その逆の効果をもたらすこともあります。では、「それなり」から「いいね!」に変えるにはどうすればいいのでしょうか?それは、ソーシャルメディア映えする開封シーンを演出することです。

残念ながら、デザイナーは商品の配送方法をコントロールすることはできませんし、外装パッケージは旅の途中でかなり傷んでしまいます。しかし、この問題は素晴らしくクリエイティブな方法で解決できます。それは、箱の内側にデザインを施すことです。つまり、箱の外見は無愛想で、汚れていたり、傷んでいたりしても、内部はまったく別の(インスタグラム映えする)ストーリーになっているのです。

箱の内側のデザイン

また、箱の内側に華やかさを加えることで、消費者に「この特別なデザインはすべてあなたのためだけに」というメッセージを送ることができます。そのメッセージとは、「あなたは特別な存在であり、あなたには特別な体験をする価値がある」というものです。そして、その体験をオンラインで何千人もの人々と共有してもらえれば、それはブランドにとってのこの上ないボーナスとなります。

サステイナビリティ: 消費者のロイヤルティ、環境への責任、そして収益性

しかし、ソーシャルメディアはブランドにとってマイナスに働くこともあります。先日、アイブローペンシルをオンラインで注文した友人の写真をソーシャルメディアに投稿しました。1本のペンシルが、何千本ものペンシルを収納できる箱に入って届いたのです。コメント欄は大盛り上がりでした。その並外れた無駄遣いに人々は驚愕しました。このようなことにも今、注意を払うべきなのです。

サステイナビリティは、消費者にとってかつてないほど重要になっています。Accenture社の調査によると、50%以上の消費者が、持続可能な、再利用可能な、リサイクル可能な製品や商品をプロデュースしているブランドに、より多くのお金を払うと答えています。このニーズは、Eコマースパッケージにも及んでいます。

ブランドは、サステイナビリティに関する自社の方針如何によって、消費者のロイヤルティを得たり失ったりすることに気づき始めています。以前は、サステイナブルな活動を行うブランドは、そもそも環境問題に関心のある一部のブランドに限られていました。今、消費者はどのブランドにも環境への責任を求めています。これはとても重要なことなので、繰り返しお伝えします。もし、あなたのブランドが環境保護に積極的に取り組まないようであれば、消費者は他のブランドに流れ、売上は減少していくでしょう。

買い物をする時、消費者が価格だけを考慮する時代は終わりを告げました。あなたのブランドのサステイナビリティに対する姿勢に対し、消費者は厳しい目を向けているのです。

  1. パッケージがリサイクル可能(Recycle)または再利用可能(Reuse)であるか
  2. 商品およびパッケージが、再生可能な資源(Renewable)を使用し、またそれが責任ある方法で調達されているか
  3. パッケージが中身の大きさに応じた適切なサイズになっているか(Reduce)


では、どうすればブランドは環境に配慮しながらマーケットを維持し、収益を上げることができるのでしょうか?その答えは意外にも、「パーソナライゼーション」にあります。

パッケージのパーソナル化

究極のデザイン要素は、パッケージのパーソナライズです。かつては限られた人々のものであったパーソナライズは、デジタル印刷の進歩により、今では実用的な選択肢となりました。まだそれほど多くのブランドがWeb-to-printを利用していないので、いち早く導入すれば、お客様を驚かせることができるチャンスです。

例えば、私がNatureBoxやFabFitFun、あるいはAmazonのサブスクリプションである商品を定期購入しているとすると、販売側のブランドは私に定期的にその商品を送っていることを知っているはずです。過去に私が購入した商品に関連したイメージや、私が興味を持った情報を使って、私のために特別なボックスを作ってくれても良いのでは?あるいは、もっとシンプルに、私の名前を入れたパッケージを送ってもいいのではないでしょうか。

パーソナライズされた箱

自分の名前が入った美しいパッケージを受け取ったら、私は携帯電話で写真を撮って、ソーシャルメディアに投稿することでしょう。友達にも教えてあげたいし、素晴らしいレビューも書くかもしれません。Eコマースのパッケージをパーソナライズすることは、私がそのブランドのファンになることを意味し、私はオンとオフの両方で友人にその商品について話すことで、無料で宣伝をすることになるのです。そう考えると、手間とコストを加えても、投資する価値は十分にあります。

Infogroup社の調査によると、44%の消費者が、マーケティングメッセージをよりパーソナライズしてくれるブランドに乗り換えたいと答えています。心のこもったもてなし、自分のためだけのメッセージや体験は、人々の記憶に残ります。そして、その忘れがたい記憶がロイヤルティを高めるのです。

実際に、パーソナライズは利益にもつながります。88%のマーケティング担当者は、カスタマイズによってビジネスが拡大したと答えています。パッケージだけでなく、中身もパーソナライズしてみませんか?お客様の興味に合わせて他のブランドのサンプルやパートナー企業とのコラボレーション商品を同梱したり、インフルエンサーや企業の創業者からのパーソナライズされたメッセージを添えたり。調査によると、消費者はこのような特別な演出を喜ぶだけでなく、期待するようにまでなっています。

特にミレニアル世代の市場シェアを獲得したいのであれば、ぜひ商品やパッケージをパーソナライズしてみましょう。彼らほどカスタマイズを好む層はなく、ブランドが自分たちを理解し、好みに合わせてくれることを期待しているようです。

店頭での購入からオンラインショッピングへの移行は、パンデミック後も「ニューノーマル」として定着していくでしょう。人々は、オンラインショッピングの手軽さを実感しています。数回クリックするだけで何時間もの手間が省けるのであれば、オンラインショッピングはこれからも人々の大切な選択肢であり続けるでしょう。

今こそ、ブランドとパッケージ製作会社は、Eコマースパッケージを進化させ、忘れられない顧客体験を提供する時です。

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