Roland

スペシャリストコラム

サーキュラーエコノミーの時代へ。循環型パッケージで事業を継続。

VICKI STRULL

VICKI STRULL

パッケージのデザイナー、戦略家、講演者として、一流ブランドや新進ブランドに、オプティチャネル・マーケティング戦略におけるパッケージ印刷の活用方法をアドバイスしています。
また、印刷サービスプロバイダーやブランドオーナーに、新たな収益源を生み出すためのコンサルティングを行い、その戦略を世界各地のデザイン、パッケージ、印刷関連のイベントで講演しています。vickistrull.comまたは、Linked Inで@vickistrullをフォローしてパッケージの最新情報をチェックしてみてください。

あなたはお客様を大切にしていますか?お客様との良好な関係を維持したいですか?(答えは明白ですね。)

ただし、ここで問われていることは、お客様を大切にしたいかどうかではなく、競争が激化する市場でいかにしてお客様の心をつなぎとめていられるかということなのです。

少し前までは、そのカギは「価格」にありました。一番安い商品を提示した人の勝ち。しかし、今はそうではありません。今や買い物客は、小銭を節約することよりも、製品が環境に与える影響に、より大きな関心を持つようになっています。

企業の社会的責任(CSR)は、もはや単なる倫理的な問題にとどまらず、企業活動の収益性にまで影響が及ぶ時代となりました。

サステイナビリティ戦略

サステイナビリティという言葉は多くの場合、企業のマーケティング戦術の一環として発信されるトレンドワードになっている側面があります。ただ、企業がその言葉を行動で裏付けないと、そのメッセージを受け取る消費者からは、「グリーンウォッシュ」と呼ばれるマイナスイメージとして受け止められかねません。このような事態を防ぐためには、サステイナビリティに対する包括的なアプローチをブランドの価値観として組み込むことが必要です。製造プロセス、調達、サプライチェーン、成長戦略、労働慣行、そしてセールスやマーケティングなど、すべての段階でサステイナビリティが考慮されていれば、それは本物です。そして、消費者はそれが本物であることを認めます。


著名なブランドもその重要性を把握しているようです。Amazon、コカ・コーラ、ナイキ、ユニリーバ、モンテリーズ、ロレアル、バーガーキングなどのブランドは、サステイナビリティの目標設定と達成計画を公開しています。小規模なブティックでも、サステイナブルな製品を作ること自体を企業理念として活動しているケースがあります。環境配慮に対する努力をしていないブランドは、大多数の消費者にとって魅力的ではなくなり、一歩間違えれば見放されてしまいます。

環境に配慮したプロセスで持続可能な製品を作るということは、「良い仕事をする」ということに留まらず、「健全なビジネスの継続」を意味します。買い物客は口先だけの賛同でなく、購買行動で各自のスタンスを示し始めています。2019年に発表されたNielson Insightsのレポートによると、世界の消費者の大多数(73%)は、環境への影響を減らすために自らの消費習慣を変えたいと考えており、41%はオーガニック製品にもっとお金を払うことを「強く」望んでいます。

ブランドやメーカーは協力して、地球へのコミットメントを維持するための革新的な方法や素材を見つけなければならず、それがひいてはロイヤルカスタマーの獲得にもつながります。

幸運なことにパッケージには、ブランドがお客様に選ばれ、そしてリピートしてもらうための、持続可能性を実現する余地がたくさんあります。

消費者が評価するサステイナブルなパッケージ

誇り高き「痩せ型主義」

誰かに「あなた痩せすぎ」と言われたことはありますか?場合によってはネガティブな言葉ですが、サステイナブルなパッケージを語る上では、ポジティブな意味にとらえられます。軽量化とは、通常のパッケージ素材と同じ感触や強度を持つ、より軽量の板紙を選ぶことです。ブランドが軽量の板紙を指定してパッケージの重量を減らすと、パレットやスキッドあたりの重量が減り、燃料や輸送コストが削減されます。これが数百万個のパッケージに及ぶと、物流コスト、ひいては製品の収益性に大きな影響を与えます。

パッケージの軽量化

オルタナティブ(代替え案)を探す

オルタナティブ・ミュージック。オルタナティブ・フード。オルタナティブ・テクノロジー。私たちはいつの時代でも、オルタナティブ(代替品)を検討してきました。プラスチックの代替品には、バイオディグレーダブル(生分解性素材)、コンポスタブル(堆肥化可能素材)、リサイクルされた素材、リサイクル可能な素材など、実に多くのサステイナブルな選択肢があります。ギフトカードのように、プラスチック以外の素材を使用しても、製品の品質にはまったく影響がなく、さらに生産上のメリットを高めることができる場合もあります。

小さな商品が入った巨大な箱にNO

小さな商品が巨大な箱に入って送られてくるのは嫌なものですが、そう思うのは私だけではないようです。私がLinkedInに投稿した記事の中で最も反響があったのは、アイライナーペンシルと、それが郵送された過大なパッケージの写真でした。みんな、その無駄遣いっぷりに驚愕しました。理想的なのは、棚に並んでいるパッケージも、発送される外装箱も、その商品のサイズに合っていることです。これを「ジャストサイズパッケージ(right-sized packaging)」と呼びます。

適正な大きさのパッケージ

以下に記すようにパッケージデザインへ初期投資することは、長期的にはポジティブな費用対効果をもたらします。

  1. 材料の購入量が減れば、初期費用を削減できます。
  2. パッケージが小さければ、より多くのケースがパレットに収まり、輸送コストが削減されます。
  3. より多くの製品をより少ないコンテナで運ぶことで、二酸化炭素排出量を削減できます。
  4. 買い物客が適切なサイズのパッケージを開封すると、その人はよりシームレスな顧客体験をすることができ、さらには、あなたのブランドが環境への責務を果たしていると認識し、インスタグラムであなたへの共感を表明してくれるかもしれません。


クリエイティブな再利用法

娘がまだ小さかった頃、私が家の家具を揃えていたときに出た空き箱が、娘の砦や遊び場になりました。ソーシャルメディアを見ていると、箱を再利用して猫のための要塞を作っている人を見かけることがあります。私の友人には、庭の雑草を除草するために箱を再利用している人がいます。軽い箱はシュレッダーにかけ、コンポスター(推肥をつくる容器)に混ぜることもあります。
 

リサイクル。みんなの義務です。 

リサイクルは、誰もが協力しなければならない大きなタスクです。パッケージの中にはリサイクルできないものもあるため、多くのブランドは「How To Recycle」ラベルを使用して、パッケージのどの部分がリサイクル可能で、どのようにリサイクルすればよいかをお客様に示すようになっています。例えば、ボトルのシュリンクスリーブに付いているジッパーストリップにお気づきでしょうか?これは、シュリンクフィルムはリサイクルできませんが、ボトル自体はリサイクル可能だからです。各ブランドでは、100%のリサイクルが難しいパッケージでも、最大限リサイクルできるよう努力をしています。

パッケージのリサイクル

循環型への責任

「ゆりかごから墓場まで」、さらには「ゆりかごからゆりかごまで(cradle to cradle)」。*1ライフサイクル全体を考慮したとき、その製品は真の意味で環境に配慮したものとなります。サステイナビリティは、資源からつくり、使い、捨てる、という直線的なものではなく、循環的なプロセスであるべきです。ほとんどの場合、製品を正しくリサイクルする責任は、その製品を購入したお客様に課せられています。しかし、それでよいのでしょうか。

その製品に何が使われていたのか、その廃棄物をどのように再利用すればよいのかを本当に知っているのは誰でしょうか?メーカーと消費者のどちらでしょうか?

例えば、ナイキの「Reuse-A-Shoe」というプログラムがあります。これは、古いスニーカーを加盟するナイキ店に持っていくと、その靴が再利用されるというものです。再利用後は新しいスニーカーに生まれ変わったり、陸上競技場のグラウンドの素材として使われたりするかもしれません。コンポスト(堆肥化性)や生分解性がないからといって、再利用できない訳ではありません。そして、メーカーは、製品のライフサイクルの中で「ループを閉じる(循環を作る)」ための力、能力、資源を持っているので、責任を負わなければなりません。

ループを閉じ、サーキュラーエコノミー(真の循環型経済)を実現するためには、製品のライフサイクル全体を考慮する必要があります。このようなサーキュラーエコノミーを構築し、支援することは、世の中のすべての人々が貢献し、勝者になるということにつながります。「誰かが面倒を見てくれるだろう」と考える時代は終わりました。今日、買い物客はブランドが環境への影響に責任を持つことを期待しています。製品やパッケージの持続可能性の向上に積極的に取り組む企業は、生き残るだけでなく、間違いなく繁栄していくでしょう。

*1^ William McDonough(米国)と Michael Braungart(ドイツ)による”Cradle to Cradle: Remaking the Way We Make Things” (2020年)より。ゆりかごを地球に見立て、活用した資源をゆりかごに戻し再利用する、完全な循環型の社会を目指す考え方。

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