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スペシャリストコラム

社会で役立つラベル

大野 高志

大野 高志
ラベル新聞社 編集部

『ラベル新聞』は1969年、ラベル業界唯一の専門紙として創刊しました。シール・ステッカーなどの粘着ラベル、シュリンク・インモールド・ラップラウンドなどの非粘着ラベル、RFID*1・NFC*2技術を活用したスマートラベルといった領域をカバーし、技術・素材・加工資機材・製品・周辺機器・システム・市場などラベルビジネスに関わるすべての皆さまに役立つニュースをお届けします。
筆者はデジタル印刷分野を中心に取材活動を行い、海外展示会などにも出没しています。

ラベル業界の専門紙という立場から、複数回にわたってラベルの活用事例やトレンド情報、将来予測などを伝えていきます。初回となる今回は、ラベルが世の中でどのように役立っているのか、身近なところから普段目にする機会が少ない領域にまでスポットを当て、小さいながらも大きな役割を果たすラベルの意義を解説していきます。

ラベルと聞いて真っ先に思い浮かべるものはなんでしょうか。日ごろスーパーマーケットやコンビニの店頭で目にする食品などの顔となる商品ラベルをはじめ、アレルギーやカロリー、原材料といった項目を記載した成分表示ラベル、あるいは「特売」や「期間限定」の文言で購買意欲を高めるPOPラベルなどが代表的な活用事例です。家庭内でも、小型のプリンターで調味料の容器や収納箱に中身を示すラベルを貼ったり、子どもの持ち物にお名前シールを付けたりしているケースもみられます。その他にも、急増している宅配便の伝票もラベルですし、医薬品や工業分野などでは管理の効率化と個体識別用途にもラベルが使われています。直近では、新型コロナウイルスに対するワクチンの接種券にも、管理の効率化と作業性向上の観点からシートラベルが採用されました。

いずれも共通しているのは、“情報”を届けるということ。商品に込められた想いを伝えるブランドイメージの発信、時に命に関わる内容物の明示、円滑な管理を実現するための個体番号の表示など、ラベルは貼るだけでモノに情報を付与できる利便性の高いツールなのです。

さらに、粘着紙を活用した商品では、付せんやマスキングテープといった文具も人気です。特にマスキングテープは本来のマスキング(覆い隠す)という工業用途以外でも、テープの意匠性そのものの価値が認められてデコレーションやコレクション需要を掘り起こして市場が拡大。テープという形状以外にも、多彩な絵柄を1シート内にまとめたマスキングシートもみられるようになりました。

さまざまな場面で活躍しているラベルは、日進月歩で性能が向上しています。冷凍棚など氷点下の使用でも剥がれない、通販で購入した商品に直接貼られているような管理用途のラベルを剥がしてものり残りしない、ユニバーサルデザインを取り入れて見やすくする、印字された2次元コードに商品の情報を格納してトレーサビリティーやセキュリティー用途に役立てる、温度の変化によって色が変わり安全性や食べ頃を表すなど、活用シーンに応じた豊富な機能を実現できるのです。最近では環境対応型製品として、再生PETやバイオマス素材を使用したラベルも市場投入されています(ラベルの環境対応についてはリンテック(株)さんのコラムで詳しく解説されています)。

デジタル化時代の到来に先立ち、以前から電子化やペーパーレスの潮流によって印刷物、紙の使用量は減少傾向にありますが、モノに付随するラベルは右肩上がりの成長市場です。直近のコロナ禍では出荷量が前年比微減となったものの、欧米や中国などでは経済活動の再開に伴っていち早くラベル市場が回復傾向にあり、根強いニーズを維持しています。消費者ニーズの多様化に対応するため、商品の多品種小ロット化が進行している世の中にあって、貼るだけで情報を付与でき、フットワークの軽い商品展開を支援できるラベルの市場は一層拡大していく見込みです。

粘着ラベルの売上高推移グラフ

コロナ禍ではソーシャルディスタンス確保を促すステッカーや抗菌・抗ウイルスシートなど新たな需要開拓も進むほか、近年成長めざましいデジタル印刷によるオンデマンド対応・ロスの削減、電波を用いて非接触でデータを読み書きするテクノロジーであるRFIDを活用したタグラベルといった将来性の高い製品・ソリューションも台頭しています。

食品や飲料・酒類、物流、医療・医薬品、工業分野などありとあらゆる産業に関わり情報を発信するラベルは、広大な可能性を秘めているのです。

*1 ^Radio-Frequency Identification の略。無線を用いた自動認識技術の一種で、タグ(荷札)と呼ばれる小さなチップを用いて、様々なモノを識別・管理するシステムのことである。(参考文献:weblio辞書)
*2 ^Near Field Communicationの略。最長十数cm程度までの至近距離で無線通信を行う技術。(参考文献:IT用語辞典)

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