Roland

世界のデジタル化ニュース

新規参入が熱い!?3D技術を駆使した「ルアー」の開発に注目

おりも みか
製造業ライター

釣りをされる方にとって身近なルアー。魚に餌と誤認させ、食いつかせるための疑似餌のことです。釣りをしない方にとってはあまり馴染みのないものかもしれません。

一口に釣りと言っても、たくさんの種類があります。海釣り、川釣り、渓流釣り。湖や池、管理釣り場や釣り堀で楽しむ方も。また海釣り一つとっても、堤防や磯で釣るものもあれば、船に乗って近海や遠くの海に行くこともありますし、深海を狙うものもあります。

日本は周囲を海に囲まれているだけでなく、川も多く良質な釣り場が豊富です。そういう意味で日本はまさに釣り天国。その分使う道具も実にさまざまな種類があります。実は私の実父と夫は大の釣り好き。本当にたくさんの釣り道具を持っていて「こんなに必要なの?」と聞いたところ、「釣りの種類や魚の大きさによって道具が違う」とのこと。大抵どんな町にも釣り道具の専門店がありますし、今ではネットショッピングでも多種多様なものが手に入ります。

なかでも、特に種類が多く、色鮮やかで目を奪われてしまうのがルアーです。

ルアーの素材はもともと木製だったようですが、現在はプラスチックや金属でできているものが主流です。また、本物の小魚と見間違えるほどにリアルな塗装がされているものもあれば、ピンクやオレンジ、イエローなどの蛍光色を使った、自然界にはない色鮮やかなものもあります。さらに、見た目だけでなく、浮くタイプ、跳ねるタイプ、ヒラヒラとした動きで獲物を引き寄せるタイプ…など機能にも差があります。私も子どものころ釣り具屋さんで、カラフルなルアーを見るたびに不思議に思い、父に尋ねたことがあります。「魚は人間とは目が違うから、どう見えているかはわからない。狙う魚や場所、天気によっていろいろ試すんだよ」と父は言って、ルアーを吟味していました。周りの環境に合わせて道具を選び、魚と知恵比べするのが釣りの醍醐味なのかもしれません。

そもそもルアーはその性質上、1回の生産ロットはあまり大きくなく、多品種少量生産が主流のようです。そのため大手メーカーだけでなく、大小さまざまなメーカーが開発・販売に乗り出しており、また、人気のあるプロの釣り師が、自作のブランドを立ち上げるなど、新規参入も盛んな市場です。

ルアーの製作工程では、なにより実際に使用してみるという検証プロセスがとても重要です。ルアーの商品価値は「実際に魚が釣れるかどうか」にかかっているためです。データ制作からサンプルを製作して、検証。また修正して検証。そういった開発モデルには、大がかりなものよりも、小回りが利く機械や加工機こそが求められます。現在は卓上で使用できる3D切削加工機や3Dプリンターなどの導入が進んでいます。なかでも、無垢のABS樹脂からルアーを切削できる3D切削加工機は、実際のフィールドテスト用に強度が出しやすく、量産時に比重が変化してしまうこともないため、より実践的な試作手法ということです。

釣りが好きな人は、道具などを自分が使いやすいように改造したり、他人と差をつけることにコストをかける傾向にあるようです。実際、私の父はフライフィッシング用の毛鉤を自作していましたし、夫は自分でロッド(釣り竿)を塗装したり調整したりしています。釣りというのは、個人カスタムへのニーズが高いスポーツです。

今や大手メーカーのような大がかりな設備や工場への伝手がなくても、デジタルデバイスを活用すれば、手軽に「ものづくり」ができる時代です。ルアーは比較的単価も高く、実に広い裾野のある市場です。もしかしたらまだ誰も手を出していない「ブルーオーシャン」が見つかるかもしれません。

世界のデジタル化ニュース

さらに表示