もしプロトタイピングがこの世になかったとしたら。世界中のデザイナー、ブランドオーナー、印刷担当者が頭を抱えている姿が容易に思い浮かびます。プロトタイピングは、デザイナーやブランドにとって、コンセプト出しから生産移行まで、物理的な現実世界でアイデアを探求できるため、デザインの実現可能性を評価し、パッケージ開発を機敏に回す上でとても貴重なものです。

特定のブランドと一緒にパッケージの試作（プロトタイプ）を作る際には、顧客体験、商品棚でのアピール、プレミアム性など、マーケティングの意図と消費者の視点を考慮します。また、最終生産も視野に入れ、触感やメタリック、基材、印刷適性など、実用的な観点からも検討します。

重要なのは、プロトタイピングはすでに図面上にあるものを具現化するだけでなく、その他にもどういった可能性があるかを探ることができるということです。最終的に、ブランドが消費者のエンゲージメント、売上、収益を促進するための最も強力なデザイン、形状、機能を特定することができるのです。

今回は、パッケージのプロトタイピングで多くの注目を集めるCog社で、技術開発分野の最高責任者であるLindsey Frimming（リンジー・フリミング）氏にお話を伺いました。Cogとそのクライアントの成功は、優秀な開発デザイナーチームだけでなく、印刷機器の提供パートナーであるローランド ディー.ジー.にも依存していると、リンジーは話してくれました。パッケージのプロトタイピングにまつわる 「ナニ」 と 「ナゼ」、そして印刷機器パートナーの優位性を語ってくれたリンジーさんへのインタビューをお届けいたします。

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プロトタイピングとは具体的にどのようなもので、Cogはどのようなものを手掛けているのでしょうか。

プロトタイピングとは、特定のアイデアや、沢山出たアイデアを3次元（3D）で構想・検討する機会のことです。Cogでは、紙器やラベルから軟包装、包装紙、シュリンクなど、多種多様なパッケージのプロトタイプを製作しています。なかでも、ブランディング、製品情報、情報提供、感覚的な作用などを提供する二次包装、いわゆる外装容器のプロトタイピングを得意としています。基本的にお客様が目にするパッケージですね。ブランドのためにプロトタイプを作り、さまざまなコンセプトを検討し、それが美しく、本機生産が実現可能であることを確認します。

プロトタイピングを行うことにはどういったメリットがありますか？

パッケージ開発におけるプロトタイピングの最大のメリットは、「触感」、「体験」、そして「視覚」です。調査によって、消費者が一度パッケージに触れると、その商品を買う可能性がとても高くなることが分かっています。プロトタイピングでは、ブランドが本生産に入る前に、仕上げや色、特殊印刷、エンボス加工、メタリック箔などが、どういう手触りに仕上がるのかをテストできます。ブランドは消費者に体感を提供することを念頭に置いています。スクリーン上の2D画像やPDFからでは、そのインパクトを十分に感じ取ることはできません。ブランドの商品企画担当者、デザイナー、そして消費者パネルが、触ったり、手に取ったり、持ったりして体感できる3Dの現物試作がとても重要なのです。プロトタイピングによって、ブランドは、その投資が報われることを確実にできます。

体験は、プロトタイピングの2つ目の利点です。優秀なパッケージは、開封時であれ、製品パッケージそのものであれ、消費者にユニークな体験を提供できているはずなのです。プロトタイピングによって、ブランドはそのインパクトを事前にテストすることができます。

プロトタイピングの3つ目の利点は、視覚です。最近のソフトウェアは、画面上に美しいデザインのグラフィックを表現することができますが、それと実際に見て体験することは全く違います。プロトタイピングでは、デザインの要素が実際に意図したとおりに反映されているかどうかを確認することができます。3Dシミュレーション・ソフトを使っても、テキストや特殊印刷による加飾が意図したとおりにパッケージに反映されるかどうかを確認するのは難しいのではないでしょうか。

プロトタイピングはどのように活用すると効果的でしょうか？

ブランドがプロトタイピングを私たちに依頼する場合、理想的なのは、ブランドが数あるデザインアイデアから候補を絞り込み、特にお気に入りのデザイン数点を用いて、どんな表現が可能かを模索するというケースです。すべてのデザイン案を試すのではなく、最も強力なコンセプトをブラッシュアップし、不要なものを取り除くことが重要です。また、プロトタイピングは、ブランドが本生産にGoサインを出す前に、新しい技術や選択肢を探るのにも役立ちます。さらに、私たちが専用の設備を使ってプロトタイプを製作するので、ブランドと印刷会社は、自社でテストをする必要がありません。また、もし印刷機を用いた本機校正を行うとしても、より明確なイメージを持った状態で行うことができます。これによって、コストや材料、時間を大幅に削減することができます。

ブランドがプロトタイプを作らなかったことで、完成したパッケージが期待通りにならなかった例はありますか？

あるプレミアムスキンケアブランドのケースです。彼らはクリスマス向け商品の準備を進めていて、いくつかのアイテムを靴下に詰め込んだパッケージを作ろうとしていました。パッケージの側面には赤いリボンのグラフィックが描かれていたのですが、最終生産に入る直前になって、リボンに箔の装飾を加えることになったそうです。でも、その箔は箱の上部と側面に貼られていたので、棚に並べると見えなくなってしまいました。買い物客はその仕掛けに気づくことができたでしょうか？通りすがりにキラっと輝いて、お客さんの目に留まったでしょうか。答えはノー。前面になかったために、その小さな輝きとホリデーシーズンの特別感を誰も味わうことができなかったのです。ブランドは箔にコストを掛けましたが、買い物客はその存在すら気付かなかったので、期待した効果は得られませんでした。

数ヵ月後、彼らは私たちのところにやってきて、「もし早い段階であなたのところに来ていたら、あなただったらどうしましたか？」と尋ねました。そこで私たちは、さまざまなパターンの正面のデザインを作成し、買い物客の目に留まり、興味を引くようなコンセプトを何十種類も示しました。これこそ、プロトタイピングの真骨頂ですね。

パッケージ「正面」の話が出ましたが、なぜフルパッケージの試作ではなく、正面（プリンシパル・ディスプレイ・パネル）から始めるのでしょうか？


特に、特殊な仕上げや装飾を施す場合、試作にはコストと時間がかかります。しかし、私たちの考えでは、構造、形状、サイズを検討するのでなければ、必ずしもパッケージ全体のプロトタイプを製作しなくても、勝てるコンセプトが見つかるということです。ホリデー仕様の紙器パッケージの場合、正面部だけを取り出して、30種類のバリエーションを製作しました。そして、目的、求める効果、予算などの観点から、いくつかのグループに分類しました。正面部のみを試作提案することで、クライアントは時間とコストを節約できつつも、最適なデザインとその配置を得ることができたのです。

Cogでは全てローランド ディー.ジー.社の印刷機器だとお聞きしています。それはなぜですか？

わが社は、究極のローランド ディー.ジー.ファンクラブなんです！ 他の設備やプリンターについても勉強していない訳ではありません。展示会にも足を運び、他社のプリンターも検討しましたし、他の選択肢も見てきました。結局のところ、どうすれば最高のものが作れるか、ということにつきます。ローランド ディー.ジー.のデジタルプリンターは、いつでも私たちのニーズを満たしてくれますし、さらにそれを超えるものであることを実感しています。

ローランド ディー.ジー.のプロトタイプソリューションを選ぶ最大の理由は何ですか？

同社の機器の利点は、汎用性、使いやすさ、剛性、機能性です。彼らのプリンターは本当にたくさんのことができるんです！！また、1台操作を習得しさえすれば、他の機種も難なく使いこなすことができるようになります。だから、新しいモデルの導入や買い替え、新しい技術をマスターするのが本当に簡単なんです。色々な機種を、同じ感覚で使いこなせることは大きなアドバンテージですね。ローランド ディー.ジー.の製品コンセプトは、いかに簡単に機器を使いこなせて、その能力を誰でも最大限に引き出せるかってことなんだと思います。さまざまな機種が互いに連携できるよう、多くの専用ソフトがサポートしてくれます。彼らの製品は、私たちのクリエイティブな発想をいつも受け入れてくれているように感じています。

機器の種類によって、できることに違いがあるのでしょうか？

そうですね。私がローランド ディー.ジー.のデジタルプリンターで最も気に入っているのは、印刷だけでなく、ほとんどの機種がカット、抜き加工もできることです。カスタムメイドの抜型を作る時間がなく、予算もないようなケースでは、これはとても重要なことです。例えば、クライアントから支給されたパッケージの展開図があるとします。それが単純なものであれ複雑なものであれ、たとえ円であっても、クライアントのデザインチームはしばしば、「出力サンプルを貰えれば、手でカットしますよ」とおっしゃいます。でも、私たちは「それには及びません。こちらでカットします。プロトタイプの本当の感触がわかるし、最高のプロトタイプができますよ」と答えられます。このように、1台の機械に多くの機能が詰まっていることは、大きなメリットです。

ローランド ディー.ジー.では、UVプリンターも扱っているのが嬉しいですね。UVインクの良いところは、基本的に何にでもくっつくことです。私たちはさまざまな基材を扱い、実験的な試作を行うため、UVプリンターを使わない手はないと思っています。しかも、ダイレクト・オブジェクト・プリント技術、つまり立体物に直接印刷する機能もあり、欠かすことのできない存在ですね。私たちの実験志向に完璧に応えますし、とってもとってもタフなのです。イノベーションのために、どんな酷使にも耐えられる。同社のマニュアルやエンジニアが決して言及しないような、あるいは推奨しないような強烈なことを、私はUVプリンターに要求してきました。

もちろん、すべての印刷会社がUV印刷機を備えているわけではありませんし、ブランドによってはUVインクが苦手とするパッケージ仕様を持ってくる場合もあります。そこで、ローランド ディー.ジー.のエコソルインクプリンターも用意しています。プロトタイピングにおけるエコソルインクの優れた点は、タトゥーのように、基材に自然に溶け込んでくれることです。また、シュリンクフィルムのプロトタイピングの際にも、溶剤インクはより柔軟性があります。シュリンクの場合は、製品にぴったりとフィットする基材や素材を選択する必要がありますよね。
ローランド ディー.ジー.のプリンターは、UVインクによる硬化性、溶剤インクによる柔軟性、カッティングなど、すべての機能を等しく使用できるという利点があります。

チームでは、各プロジェクトに必要な機器の組み合わせをどのように決定していますか？

チームとして、各プロジェクトを総合的に、問題解決の観点から決めています。最も現実的でベストなアウトプットにするためには、何が必要なのか？そのためには、どのような機器や技術が必要なのか？そして、その方法は選ばれた印刷本機の生産環境でうまくいくのか？私はよく、私たちのプロジェクトに対するアプローチは、クリエイティブなマッドサイエンティストであるようなものだと言っています。常に自問自答しているんです。もし、こうしたらどうなるだろう？こちらの方法と比較したらどうなる？この方法はしばらく試していなかったので、もう一度見直してみようか？もちろん、私たちが成長し、新しい才能をチームに加えることで、過去・現在・未来の技術について新しい視点を得ることができます。ローランド ディー.ジー.のプリンターと技術は、私たち開発デザイナーにとって最適な（そして絶対に必要な）ピースなのです。

Cogでは、お客様が印刷業界のトレンドに取り残されず、先んじるために、どのようなサポートをしているのでしょうか。

プロトタイプにおけるイノベーションの責任者として、パッケージングや特殊印刷、後加工の最新トレンド、そして今後のトレンドに常に敏感であることは、私の肩書きの通りです。でも、それは始まりにすぎません。なぜなら、その知識をどのようにクライアントと共有するかが重要だからです。そのためには、クライアントとの強い関係やパートナーシップが必要です。Cogでは、ナレッジの共有とコンシェルジュ的なサービスを大切にしているため、クライアントのチームに対してプレゼンテーションの機会を貰い、信頼を得ています。もちろん、Cogがこれらのトレンドをどのようにプロトタイプ化していくかという計画も必要です。

試作の段階では、業界のトレンドや新しい仕上げ加工に対応するため、機器を徹底的に追い込んで、あらゆる能力を引き出すことが必要です。結局のところ、私たちは先進的な生産設備の数々を備えた25,000平方フィートもある巨大な印刷工場ではありません。金型やエンボス・プレートを社内製作する能力もありません。だから、クリエイティブにならざるを得ないのです。私たちは好奇心とクリエイティブな発想の両方を大切にし、チームを作っていかなければならないのだと思います。また、外部のデザイナーの方々と仕事をする際には、彼らがデザインに込めた思いに対する深い尊敬の念を持ち、それがきちんと反映されたパッケージが、棚に並ぶのを見たい一心で仕事をします。

Cogのそういったプロトタイピングに対する姿勢を活かしていくうえで、豊富な製品機能が必要だということですね？

その通りです。そして、ローランド ディー.ジー.はその能力をサポートする幅広い機器を持っていますし、私たちの厳しいニーズに応えてくれる。彼らの機器に合わせて私たちのニーズを変えることはない。もし、あなたのチームが導入設備やその仕組みと進化について理解し、ついていくことが難しいのであれば、それはすでに負けているのです。ローランド ディー.ジー.なら、すぐに使いこなすことができますし、先ほども言ったように、マニュアルにないようなことをプリンターに要求することができます。そして、それを受け止めてくれる。 よくできた、美しく設計されたプリンターです。

Cogの神髄は、実際にプリンターを操作し、クライアントの目的を実現する手助けをする開発デザイナーの献身的な努力と才能にあります。そこに化学反応が起こるのです。クライアントとのキックオフから、カンプが出来上がるまで、シームレスなコミュニケーションが行われています。人とデジタル設備、ビジョンと能力が完璧に融合しているのです。