本稿を執筆している2022年初頭の時点で、残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大は終息の兆しが見えていません。経済活動やライフスタイルに変化が生じ、ニューノーマルへの順応が余儀なくされる中、ラベルに求められる機能も多様化し、活用シーンが拡大しています。
第1回の寄稿「社会で役立つラベル」で、ラベルとは「貼るだけでモノに情報を付与できる利便性の高いツール」だと紹介しました。活用事例を見てみると、SNSやTVで“バズった”商品をPRするPOP、法改正に伴う成分表示の変更、表記ミスをリカバーする訂正シール、ソーシャルディスタンス確保を促す注意喚起など、即時対応が求められる場面でこそラベルの小回りのよさが生きるのです。
急拡大するEC市場で求められるセキュリティー性
さて、新型コロナウイルスの感染拡大によって急激に伸長した市場としては、Eコマース(EC)が挙げられます。経済産業省の発表によると、2020年の日本国内におけるBtoCのEC市場規模は19兆3,000億円で、そのうち物販系分野が12兆2,000億円を占めています。物販系分野は若年層や高齢者層など幅広い年代で利活用が進み、前年比21.71%増と大幅に伸長しており、EC化率(商取引においてECの市場規模が占める割合)は8.08%(同1.32ポイント増)。欧州や北米と比較して日本のEC化率はまだまだ低く、今後、EC市場が成長する余地は大いに残されていると言えるでしょう。ECサイトプラットフォームも徐々に拡充されており、ブランドオーナーをはじめ、個人のクリエーターらが気軽に商品をウェブ上で販売できる体制が整いつつあります
ECには宅配・伝票ラベルが欠かせませんし、近年は“セキュリティーラベル”の必要性も議論されています。商品を輸出する越境ECの拡大によって、遠く離れた海外の消費者にも安心・安全を訴求するため、また、国内のEC利用者に対しても、医薬品で模倣品が発見されたりPC部品の抜き取り被害が確認されたりしている状況下、商品のトレーサビリティー(追跡性)確保は喫緊の課題です。ブランド価値と、なにより消費者を守るためにもセキュリティーソリューションが求められていますが、国内ブランドオーナーの半数以上は模倣品対策を講じていないというデータもあります。そこで活躍するのが、スマートフォンなどで読み取って商品の真贋判定を行うQRシール、パッケージが未開封であることを示す封緘ラベルといった粘着製品の数々です。
QRシールは「いつ・どこで・何回読み取られたか」などの履歴を記録することで、セキュリティーだけではなく、データをマーケティングにも活用できるといった付加価値を生み出します。「2次元コードを活用した大がかりなシステムの導入はロット・コストが見合わない」という声に対しては、1度でも剥がすと開封痕が残ったり、ラベル自体が破れて物理的に貼り直しをできなくさせたりするなどの機能性ラベルで応えられます。コストや被着対象、流通経路などに合わせ、顧客が求める多彩なニーズを満たす手札をラベル業界はそろえているのです。
衛生意識の高まりにも応える抗菌・抗ウイルス加工
コロナ禍では、消費者の衛生意識が一層高まっていることは言うまでもありません。目に見えない菌やウイルスへの対策にも粘着製品は存分に力を発揮しています。
薬剤の塗布やイオンコーティングによって抗菌・抗ウイルス機能を実現した粘着シートは、ATMやセルフレジ端末の操作パネル、電車とバスの手すり、エレベーターのボタン、ドアの取っ手など、不特定多数が触れる箇所に好適な衛生グッズです。また、先ほども紹介した1度剥がすと破れて使えなくなる機能を備えた易破損性ラベルは、商品の開封検知で活用されるほか、宿泊施設の部屋のドアに貼付し、清掃後には誰も立ち入っていない安全の証として採用されているケースもみられます。これまで粘着製品が使われていなかった領域にも、貼るだけで衛生性を付与できる強みを生かし、抗菌・抗ウイルス機能を持ったラベルは伸長を続ける見通しです。
昨年配布されたワクチンの接種券にもラベル方式が採用され、スムーズな作業と間違えを起こさない管理を支援しました。急激な市場構造の変化や消費者ニーズに従って、早急な対策に最適なラベルは、柔軟性が高いアイテムとして今後も社会の求めに応じた役割を担っていくことでしょう。