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スペシャリストコラム

Makers’ Baseのオーダーメイドビジネスがアフターコロナに急成長する理由 -前編-

松田 純平

松田 純平
株式会社Makers’ 代表

前職ではマーケティングやヒューマンリソース専門のコンサルタントとして様々な事業企画に従事。個人のものづくりを支援する工房の企画に携わったことをきっかけに、会員制工房「Makers’ Base」を立ち上げるに至る。展開される数多くのユニークなワークショップはものづくりファンのみならず、一般層からも圧倒的な支持を集め、国内最大規模の会員数を誇る。

UVインクジェットプリンターやレーザー彫刻機などのデジタル設備から、幅広い用途に対応した縫製機の数々、鉄工や木工、伝統工芸を支える大小工具まで、100種類以上の機器や道具を擁する会員制工房「Makers’ Base」を運営する松田純平氏。ものづくりとエンターテイメントを融合させた珠玉のワークショップの数々は事業の柱として絶大な人気を誇ってきたが、未曽有のコロナ禍でその状況は一変。代名詞のワークショップ開催がままならない状況に陥る。

そんな中、生粋のヴィジョナリーは新たな収益の柱として、革やファブリック素材を使った1点もののオーダーメイドグッズ製作をオンラインで体験できる「PET DOT SHOP」を打ち出し、V字回復からのさらなる成長までをも見事に実現。その成功の秘訣に迫った。

Makers’ Base Tokyoの工房

Makers’ Base Tokyoの工房。
都立大学前の800 m2の広々としたスペースに、さまざまなものづくり設備が並ぶ。

ペットをデザインモチーフにした、オンラインのオーダーメイドグッズ販売を展開されるに至った背景を教えてください。

スタートしたのは2020年4月からで、まさにコロナ禍に入った直後ですね。来店型ビジネスが立ち行かなくなったので、非来店型のビジネスに切り替える必要がありました。当社の「工房」という機能を有効活用して提供できる非来店型サービスを模索した時に、選択肢の一つとして挙がったのが「PET DOT SHOP」です。実は当初からペットという題材や、革とかファブリックの素材にこだわっていた訳ではありません。コロナ禍になった直後に10本くらい企画して、そのうち実際に走らせてみたのは5本くらい。その中のひとつがこのペットをモチーフにしたオーダーメイドグッズの製作、販売です。

PET DOT SHOPを運営する松田純平氏

PET DOT SHOPを運営する松田純平氏

とても好評だと伺っております。

そうですね。このビジネスを始めてから2年経つので、ずっとこのまま続くか分からないですけど、少なくともこれがあったおかげで僕らはこの状況でも食い繋げることができました。2020年の4月はほとんど売上がゼロになったんですけど、結局はその年も増収増益でしたし、去年2021年も前年比増収増益で終えられています。


コロナ禍で年々成長させているというのが凄いです。

こういった企画を立てる際に、常に拡張性があるプロダクトを選ぶようにしているというのはあります。例えば、アイテムの種類を広げましょう、バリエーションを作りましょう、オプションを付けましょうとか。また、今はまだ仕掛けている段階ですが、別の国で売れる可能性があるものを選定しています。開始した後で拡張することを考えてもうまく対応できないことがあるので、その先の展開も企画時にすでにプランして、徐々にそれを打ち出して成長しているということです。


ペットをドット状に配置した愛らしいデザインがユニークだと感じます。

お客様からもらった写真をそのままプリントするグッズビジネスはよくありますが、それを「なんと素敵な」と言わせるような、ちゃんとデザインされた状態にするまでには、相応のバックグラウンドを持った人がやらないとできない。例えば、AIでペットの写真から顔の部分を自動で切り抜くという効率的な方法もありますが、切り抜く精度は良くても90%ぐらい。本来切り抜きたい部分の一部が残ってしまう。それは、単なる切り抜くっていう「機能」であって「デザイン」ではないんですね。

革製品やアパレルグッズなど、ラインナップが豊富。写真は、ペットがドット状にデザインされた人気の化粧ポーチと、パジャマパンツ。

Makers’ Baseのデザイナーさんがデザインしてくれると。

その通りです。工房でのワークショップでお客様と会話しつつ、それぞれの1点もののデザインを導き出すなんてことを沢山やってきたデザイナー達です。彼ら、彼女らがデザインすることにしたのは、このサービスの特長でもあるんですね。ここをオンラインの自動ワークフローでのやり方にしていたら、ここまで流行っていなかったと思います。自動でも一応完成はするんですよ。でも、出来上がったものをお客様が満足して、作ってよかった、嬉しい、これ見て見て、ってなるかっていう。やっぱり60点から80点の商品でそうはならないと思うんですよね。そこの見極めっていうのは結構大事です。


誰かに見せたくなるようなデザインを目指されたということでしょうか。

そうですね。オンラインのビジネスモデルを組もうとなった時に、売って終わりって考えるとたぶん余りうまくいかないし、イマイチの結果で終わるのではないかと。作ったものをいかに話題にしてもらえるかというところは、やはり目指していかないと、オンラインビジネスの意義は満たされないでしょうね。実店舗を構える必要がなく、参入障壁は低いので、そういう競争の激しいところではブランドを構築しないと、たくさんの方に利用してもらうのは結構きつい。買ったお客様が人に見せて、SNSで何かポストしたりだとか、そういうところの展開を見越していかないと継続性は生まれないです。

後半へ続く

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