山本貴司
リンテック株式会社 事業統括本部
印刷・情報材事業部門 市場開発室 室長
1992年入社。研究所、大阪支店、海外(中国)を経験、帰国後現在の部署に籍を置き、シールやラベルなど粘着素材の新しい市場や用途の開拓を進めている。
家庭ではゴミの日の「シール剥がし」担当。お店に行くと必ず商品のラベルを剥がしたり、においを嗅いだりして、店員さんに不審な目で見られている。ちなみに不審な目で見られることに耐えられるほどメンタルは強くないので、お店を出るたびに罪悪感にかられている。
2020年、日本国内で初の感染が認められ、その後またたく間に感染が広がり、人々の生活や趣向、衛生概念を考え直すきっかけとなった新型コロナウイルス。これまで普通に出来ていたことや接していたものが、コロナウイルス感染拡大を機に、特別なこと・ものに変わってしまった、と言っても過言ではないと思います。
公衆衛生の面で、例えば駅や百貨店、飲食店など、不特定多数の方々が訪れる場所やスポットに設置されている什器には、必ずと言っていいほど「抗菌」仕様の対応がなされていると思います。日本で特に「抗菌」対策のきっかけになったと思われる事象は、1996年に全国レベルで発生した病原性大腸菌「O-157」による集団食中毒の発生ではないでしょうか。もちろん菌は日常生活のいたるところに存在し、人間の体内にも多数存在します。歴史で言えば人類よりもずっと古いでしょう。人類よりも地球上での生活環境に影響を及ぼす存在かもしれません。歴史上の後輩である我々人類があまり気にせずに生活できているのは、やはり人間が生きていくうえで必要なものであり、またその反面、生命や生活を脅かす菌に対しての克服ができてきたからです。「必要なもの」については問題ありませんが、「克服すべきもの」については克服できるまでに、やはり甚大な被害がありました。科学技術の進歩により、その被害は抑えられてはいるものの、無くすことは不可能でしょう・・・未知のものが相手ですから。そして今回、菌だけでなく、新型ウイルスの発生に伴い、それに対する克服(共生も含め)も必要になってきました。ご存じのようにウイルスも菌と同様、人間にとっての「良し悪し」に関わらず、世界中のいたるところに存在するものです。
さて、そういった人間の生活とは切っても切れない関係にある菌やウイルス。感染経路をみると、直接・間接を問わず何かしらの「接触」が引き金になっていることは間違いありません。その対策の中で、感染予防となると、「手洗い」や「うがい」という「アナログ」な対処法が基本となるでしょう。
小さいころ、外から帰ってきたら手洗い、うがいを忘れずに、とよく言われましたが、年を取るにつれ身体に免疫がついてきたのでしょうか、手洗いやうがいの頻度は間違いなく減ってきました(自分は)。外食時も、注文後そのまま食品にかぶりついたりと・・・それが、ここ1年は石鹸の無くなるペースが確実に早くなっている気がします。また、政府や自治体、企業からも、「手洗いやうがい」、「3密を避けた行動様式」が推奨されました 。飛沫感染も、直接自分に触れる(あるいは触れたことが見える)わけではありませんが、まわりまわって自分にと考えると、間接的な接触と言えると思います。
これらの習慣や通達などで共通していること、それはやはり「接触に対する注意」と言えると思います。
ちなみに、人間の五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)による知覚割合のうち、触覚の占める割合は約1.5%と言われています。乱暴な言い方をすると、外的情報の「1.5%」を自分に取り入れるために、ものすごく注意する必要があるということですが、例えば視覚に障害をお持ちの方は、この「触覚」がすごく重要な感覚になります。1.5%という数字だけ見れば多くない感じはしますが、その情報量によって判断する事柄の重要性は、とてもとてもそんな数字で判断できるものではないと思います。
コロナの感染拡大が続く中で分かったことは、先述したように接触に注意することでかなりの効果があるようです。諸説ありますが、手洗いやうがいは日本では当たり前のような習慣ですが、世界を見ると意外と珍しいようで、医療対応の是非はさておき諸外国と比較しての感染者数の少なさは、こういった習慣によるものと言えるところもあるかもしれません。
接触を介しての感染を防ぐこと・・・ところで、この「接触」という作業ですが、2つの要素が合わさっています。一つはもちろん「触れること」、そしてもう一つは「触れられること」です。触れることについては上述のような対策で、自分でも何とかできるのではないでしょうか。今回はどちらかというと、「触れること」というよりも「触れられること」への対策、そしてそんな対策が粘着素材にどう関わってくるのかといったお話をしてみたいと思います。