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スペシャリストコラム

小さな素材が果たす、衛生への大きな役割 -後編-

山本貴司

山本貴司
リンテック株式会社 事業統括本部
印刷・情報材事業部門 市場開発室 室長

1992年入社。研究所、大阪支店、海外(中国)を経験、帰国後現在の部署に籍を置き、シールやラベルなど粘着素材の新しい市場や用途の開拓を進めている。

家庭ではゴミの日の「シール剥がし」担当。お店に行くと必ず商品のラベルを剥がしたり、においを嗅いだりして、店員さんに不審な目で見られている。ちなみに不審な目で見られることに耐えられるほどメンタルは強くないので、お店を出るたびに罪悪感にかられている。

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「触れること」へは手洗いやうがいが主な対策となるでしょう。では、「触れられること」への対策って、どういったことが考えられるでしょうか。

代表的な方法としては、「消毒」(という作業)が考えられると思います。特定・不特定多数の方々が触れるであろう場所や物を、アルコールや次亜塩素酸水といった、いわゆる「消毒液」でその対象となる表面を拭く、もしくはスプレーで吹きかけることで衛生面での安全性を担保します。

でも、素人考えですが、拭く作業も吹きかける作業も、必ずそういった作業をしてくれる「人(あるいはもの)」が必要であって、自然にそうなるということはまずありません。また、液体を使うことが多いので、実際に作業がしづらかったり、作業できない箇所もあると思います。例えば紙や木材などは、液体が染み込み、効果が付加させられるかもしれませんが、それ以上にデメリット(紙破れや木材表面の変色など)が発生する可能性もあります。またスプレータイプを使用するときも、噴霧した時に空気中に放散したり、吹き付ける距離や時間によってはムラができたりと、思ったような効果が得られないことも少なくないと思います。

そこで提案したいのがシールやステッカーでの対策です。抗菌・抗ウイルス性能を持ったシールやステッカーが存在し、それを必要な場所やものに貼り付けるだけで効果が得られるとなれば、すごく便利なのではないでしょうか。はじめから効果を考慮した仕様でシールを作っているので、効果にムラやデメリットを考える必要はそれほど多くないと思います。また、もともと「貼り付ける」目的のものですから、見た目を気にする必要もありません。

ただし、そうはいっても、やはり貼り付ける場所は千差万別。凸凹な面や環境の悪い場所などではシールやステッカーは向いていないところもあると思います・・・でも以前の「小さな素材が果たす、環境への大きな役割 -後編-」でもお話しましたが、最近のシールやステッカーは冷たい場所、水に濡れている場所、凸凹がひどい場所・・・いろんな環境でも貼れるよう、小さな構成の中に大きな技術がたくさん詰まっています。

とはいえ、シールやステッカーが持つそもそもの大きな役目は「情報を見せること」。抗菌・抗ウイルス性能を持たせるために、情報を印刷した面に後から表面を拭いたり噴霧・コーティングなどをしてしまうと、大切な情報が消えたりしてしまうこともあり、そうなっては意味がありません。

そこで考えたのが、抗菌・抗ウイルス処理済みの薄い透明フィルムをシールの上から貼り込む(ラミネートする)こと。そうすることで、最大の目的である「抗菌・抗ウイルス性の付与」はできますし、またシールやステッカーを利用する最大の目的である「必要な表示情報の伝達」も達成できます。そういった性能がつまった製品「AN16055V」*1*2は、0.016mmのフィルムを使用した非常に薄いものなので、シールやステッカーの上から貼っても、自然な風合いを保つことができ、貼られる環境に適したシールやステッカーの上から貼り合せるだけです。さらに、抗ウイルス性能評価試験「ISO 21702」、および抗菌性能評価試験「JIS Z 2801(ISO 22196)」にも準拠し、特定ウイルスの減少効果や、特定細菌の増殖抑制も確認済みです。またこのフィルムの上にも印刷や印字ができます*3。抗菌・抗ウイルス性のあるフィルムは多いですが、上から印刷や印字ができる、すなわち最終使用直前で必要情報が付与できるため、シールやステッカーを作成した後の変化・変更に対する“自由度”が高いと言えます。環境や状況に応じて臨機に対応ができる素材を提供できる強みがありますね。

また、視覚に障害をお持ちの方々にとっては、「触れること」が自身の情報収集の多くを担うものになっているので、「触れられるもの」への対応の必要性はこれまで以上に高まってきていると思います。こういった素材を利用することで、「安心・安全」という価値を提供できるのではないでしょうか。

少しでも安心して生活できる社会の実現を、シールやステッカーといった粘着素材でお応えすることがこの業界に携わっている人間として矜持を持てることだと思っています。今後、衛生面でもさまざまな対策が施され、そしてその対策はいずれ「普遍」なものとなっていくでしょう。現在のシールやステッカーに備わる素晴らしい機能が、将来の普遍的な機能として認められるよう、これからも様々な要望に応え続けていきたいと思います。

〈製品紹介〉
*1 ^:「抗ウイルス・抗菌ラミネートフィルム 〈AN16055V〉」
https://www.livasta-labels.com/products/antivirus_laminate.html

*2 ^:本製品は「抗菌製品技術協議会」が制定したSIAA登録済みです。
また、本製品は医薬品ではありません。製品上の特定ウイルスの数を減少させ、特定細菌の増殖を抑制します。すべてのウイルスや菌に効果があるわけではありません。抗ウイルス・抗菌加工は、病気の治療や予防を目的とするものではありません。SIAA の安全性基準に適合しています。抗菌SIAAマークは、ISO 22196法により評価された結果に基づき、抗菌製品技術協議会ガイドラインで品質管理・情報公開された製品に表示されています。抗ウイルスSIAAマークは、ISO 21702法により評価された結果に基づき、抗菌製品技術協議会ガイドラインで品質管理・情報公開された製品に表示されています。

抗菌SIAAマーク

*3 ^:抗ウイルス層の表面に印刷・印字処理を施すことで、抗ウイルス・抗菌性能が損なわれる可能性があります。また、印刷・印字をする際は、必ず使用機種で十分な印刷・印字確認を行ってからご使用願います。

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