ビジネスの概要
株式会社サカタは、1960年に大阪阿倍野の地に誕生した、国産品質にこだわったものづくりに情熱を注ぐ本革製品メーカーだ。デザインや品質に厳しい複数のブランドやショップへのOEM商品に携わる一方、女性をターゲットにしたRiscolや、子供でも気軽に革グッズに親しんでもらいたいというDIYコンセプトより生まれたLucky&Happyなどの自社ブランドも展開する。女性社員も多く活躍する同社では、特に、女性の多様なライフスタイルに訴求した商品企画にも力を入れる。
デジタルソリューションの用途
40年にも渡り研磨されてきた熟練の革縫製、加工の技術力に圧倒的な評価を得る株式会社サカタ。その一方で、坂田茂雄社長主導の元、効率化や付加価値提供を見据えて積極的な設備導入を進めてきた。同社の設備群の中で特に目を惹く存在が、ローランド ディー.ジー.社のUVインクジェットプリンターLEF-300である。
女性をターゲットにしたハンドバッグや財布の企画、ファッションブランドやショップとの共同デザインを手掛けるサカタにおいて、多様なデザインへフレキシブルに対応する力はなくてはならないもの。デザイナーによる、時に独創的で、芸術的なデザインが余すことなく表現された、Aiファイルのデザイン画をそのまま革にダイレクトプリントすることができるのが、UVプリンターの特長だ。デザイン画のプリントイメージを、LEF-300を用いた特長的な出力結果に結びつけるために、ホワイトインクや、凹凸を表現するクリアインクの積層、あるいは耐擦過性を向上させるオーバーコートといった特殊レイヤーをソフトウェア上で生成し、専用のプリントソフトを介して印刷する。UVプリンターのオペレーションを担当する久保氏によると、「旧来のプリント手法では、一枚の革(大判)に対して同じパターン柄の印刷しかできませんでしたが、LEF-300の場合、同じ素材の中から完成品の構成パーツ毎に、違ったグラフィックやイメージを自由に印刷できるため、デザインの自由度が飛躍的に高まりました」ということだ。
また、素材への対応力が高いとされるUVインクでも、革の種類や仕上げ方によっては高い耐久性基準を確保できないケースもある。サカタでは、長年革素材の調達経験で培ったネットワークを駆使し、UVインクと相性の良い特別な本革をタンナーと開発し、使用している。さらに、LEF-300でCMYKカラー印刷後に、同プリンターでトップコートを施すことで耐擦過性も向上させ、同社の高い品質基準を満たした革製品が完成する。
デジタルのソリューションは、デザインを確定するまでのフェーズにおける試作サンプル用途にも効果を発揮する。デザイナーの思い描く完成イメージは、PDFファイルをモニターで見るだけでは伝わり切らないことがあり、実際にすぐ素材にプリントしてチェックできるインクジェットプリンターはこの点でも重宝される。また、同社が所有する、同じくデジタル制御のCAD/CAM自動裁断機を用いれば、抜型なしで自由にデザイン通りの型抜きができるため、完成品イメージを再現した試作サンプルの製作も可能。デザイン決定フェーズで大きな役割を果たしている。
デジタルソリューション導入前後の比較
Before
- 1枚の革(大判)に対して同パターン柄を印刷していたため、裁断する場所により柄が異なり、商品の出来上がりイメージに違いがあった。
- 試作サンプルを1本作るのにも、タンナーへ革製作を依頼するところからになるため時間とコストがかかった。
- 従来のプリンターでは白データのプリントが難しかった。
After
- パーツごとに決められた柄をプリントすることが可能になったため、全く同じ柄・イメージの商品に仕上げることができるようになった。
- 試作サンプルはプリント用の革とデータさえあればその場でプリントできるため、試作にかかる時間の大幅な短縮になった。
- 白データのプリントができるようになり、ベースの革の色がプリントの色に与える影響を無くすことができるようになった。結果として、飛躍的に鮮明な色表現が可能になった *。
導入の決め手
国内外の関連する展示会を数多く訪れる坂田社長は、あるスニーカーブランドが紹介していた、自分でデザインした柄やメッセージをスニーカーにプリントして販売するサービスのデモンストレーションに感銘を受ける。革へのプリントの可能性を確信した坂田社長は、リサーチの結果、ローランド ディー.ジー.社のUVインクジェットプリンターLEF-300に行きついた。高画質で、革とインクの相性も良く、使いやすい付属ソフトウェアなど、トータルで「これならいける」という実感を得て、導入に至った。
* ^革の種類により度合いは異なる。